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雑感 コラム

クレーム対応の仕方

商売をしているからには必ずと言ってよい程、クレームはあります。
針が出た、品質不良、納期遅れ、返事が遅い、態度が悪いと、いくらでも製品OEMの仕事はクレームの可能性はあります。ですから、クレームが起きないように緻密な仕事ぶりが求められますが、クレームが起きたら仕方ありません。
最少の被害に抑えることと、「雨降って地固まる」と言われるように、クレームを乗り越えて、より信頼関係が強固になることを目指すべきです。

以前、T社にいた時に、W社の店頭から色落ちのクレームがありました。お客さんが酷く怒っておられるのでお客さんの所に一緒に行ってほしいとのことでした。W社の部長は私に「一切言い訳をしないでほしい、ただ頭だけ下げてほしい」と何度も言われました。

その商品は色落ちカラージーンズで色が落ちると表示がしてあるので、私としては納得できない気持ちでしたが、大事な得意先の依頼なので担当者についていきました。
店頭の近くの待ち合わせ場所の喫茶店に行くと、厚かましそうな大阪のおばちゃんの典型のような方がいらっしゃいました。その方は「大好きだった御爺ちゃんが買ってくれたトートバッグにパンツの色が移染した。今はもう亡くなった御爺ちゃんの形見として娘が大事に使っていたのにどうしてくれるんだ」「売り場の人にクレームを言っても返事が遅い、態度が悪い」と興奮気味に怒っています。W社の担当者は平身低頭で謝っています。
その内、お客さんの怒りは鎮まったところで「本当に申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました。これはほんのお詫びのしるしです。」と言って、W社のトートバックとブラウスを差出したら「こんなのが欲しくて言っているんじゃない、返事が遅いし、対応が悪いから文句を言っているんだ」と言います。「分かります。こんなもので許してもらえないでしょうが、どうかお使いいただくと嬉しいです」とW社の担当者が頭を下げて言うと、おばちゃんはにっこり笑って「こんなかわいい商品を貰って悪いわね、私は娘が大好きなブランドだから頑張ってほしいのよ。頼むわね」と言い、娘の自慢話を散々した後で喫茶店を上機嫌で出ていきました。
一種のクレーマーかと思いましたが、小売りは大変だなあとつくづく思いました。

この件でわかるのはクレームの初期動作を迅速にすること誠意を持って丁寧にクレームを聴くことが大事だということです。

本当は、店頭の対応だけで終わったかもしれないのに、迅速な対応ができなっただけに、責任者を出せということになり、W社の部長とメーカーの課長が出て行って消費者に直接謝罪することになった。それと事実関係を早急に調査することです。私の経験でも針が出た事件では消費者の勘違い、得意先の勘違いも多かったように思います。

部長の対応は下記のとおりです。

1) 相手の心情を理解して丁寧にクレームを良く聴く
2) 何が問題になっているか事実関係を確認する
3) 商品の代替え案で問題の解決策を提示する
4) メーカーともどもクレームへのお詫びと感謝をする

クレームが発生したら先ずは謝罪する。相手の話をしっかり話が終わるまで聞いた後に、当社の事情説明をすることが大事です。

クレームの発生は不幸なことですが、クレームの対応に誠心誠意取り組むことで、クレーム発生以前よりも強固な信頼関係になり取引が増えることがあります。
クレームがあったら避けるのではなく、貴方を鍛えるチャンスだと思い、その問題を真正面から捉え、最善の努力をすべきだと思います。

得意先が無理難題を言っている場合は、何故、無理を言うのかを考えなければなりません。上司から「値引きを取れ」と言われている場合は、いくらこちらに理があっても0回答では話が拗れるので、落としどころを探す必要があります。
しかし、得意先の担当者が利益を出すための一方的な無理難題には毅然とした態度で臨むべきだと思います。

既に倒産した会社ですが、私は1か月の納期遅れで契約額の3倍のクレームを突き付けられ、私の対応の拙さから、得意先の社長は直接名誉会長に面会を求め、T社の名誉会長に、そのクレームを全部受けていただいた苦い経験があります。
法外なクレームを受けてしまったわけですが、社会通念を大幅に超えた対応はすべきではありません。法外なクレームは取引停止を意味します。多くの得意先は取引継続を希望するので、それほどのクレームは発生しないことが多いと思います。このクレーム後、1年ほどで倒産した社長は資金繰りに困り、納期遅れに乗じ「窮鼠猫を噛む」の心境で名誉会長に噛みついたのです。

物を作ったり売ったりする仕事とは非常にリスクの高い仕事なのです。そして財務内容の悪い会社に販売することが極めて高いリスクを負っているのだということを思い知らされました。

もう一つクレームで大事なことは社内での報告、連絡、相談(ホウレンソウ)です。特に悪い話は迅速にホウレンソウがなされなければなりません。
ナポレオンが「良い話は翌朝で良いが、悪い話は私をたたき起こせ」と言ったそうです。耳障りの悪い話は上司にしにくいものですが、上司は悪い話しこそ、一刻も早く聞きたいと思っているはずです。