実践ガイド 全6回・第1回 / インドで生地を売る
誰が生地を買っているのか——インド市場の「買い手地図」
— 年商10〜100億円の生地メーカー・素材メーカーが、最初に見極めるべき5種類の買い手と産地 —
IBEF(インド・ブランド・エクイティ財団)・インド繊維省(Ministry of Textiles)・Invest India・ティルプール輸出業者協会(TEA)・アパレル輸出振興評議会(AEPC)・ジェトロ(JETRO)・texfash・IMARC ほか各機関の公表資料をもとに編集。本稿は確認済みの公表資料のみを掲載し、推論・予測的解釈は含まない。
「インドで生地を売りたい」——そう考えたとき、多くの日本メーカーが最初にやってしまうのが、「インドの縫製工場」をひとまとめにして探し始めることです。しかしインドで生地を買う相手は一種類ではありません。買い手のタイプによって、求める品質も、買う量も、支払い方も、まったく違います。ここを取り違えたまま渡航すると、時間と旅費だけが消えていきます。
本シリーズは、インドでの販売経験がゼロの日本の生地メーカー・素材メーカー(年商10〜100億円規模)が、実際に受注に至るまでの手順を全6回で追う実践ガイドです。第1回のテーマは、すべての出発点である「買い手地図」——誰が、どこで、どんな生地を買っているのかを、公表データで確認します。
一言でまとめると:インドの繊維・アパレル産業は「輸出の国」ではなく、圧倒的に「内需の国」である。輸出額330.1億ドル(FY2025-26、インド繊維省)に対し、国内市場は2,250億ドル規模(IBEF)。つまり輸出向けは全体の1割強にすぎない。それにもかかわらず日本企業の視線は輸出縫製工場に集中しがちである。生地の買い手は大きく5種類あり、それぞれ財布の大きさも判断基準も異なる。まず自社の商材がどのセグメントに刺さるかを決めることが、インド販売の第一歩になる。
✏️ 編集後記
本稿から新シリーズ「インドで生地を売る——日本の生地・素材メーカーのための実践ガイド」(全6回)が始まる。既報の「日本・韓国の生地はインドで売れるか(第1回)」「同(第2回)」が「売れるかどうか」の市場分析だったのに対し、本シリーズは「では、明日から何をどの順でやるのか」を実務手順に落とすことを目的としている。専門用語は初出時に必ず解説する。
この記事の内容
① 大前提——インドは「輸出の国」ではなく「内需の国」
② 生地を買う5種類の買い手——財布も判断基準も違う
③ 産地地図——どこへ行けば自社の買い手がいるか
④ 競争相手は誰か——「中国製生地」という既定路線
⑤ 自己診断——自社の生地はどのセグメントに刺さるか
⑥ 追い風——日系企業のインド事業拡大意欲は高止まり
⑦ 留意点・前提条件/次回予告
① 大前提——インドは「輸出の国」ではなく「内需の国」
— 数字で見ると、視線を向けるべき方向が変わる —
インドの繊維・アパレル産業と聞くと、多くの人が「欧米向けに服を大量に縫っている国」を思い浮かべます。それは間違いではありませんが、産業全体で見ると輸出は少数派です。
インド繊維省の発表によれば、2025-26年度(FY2025-26/2025年4月〜2026年3月)の繊維・アパレル輸出額は330.1億ドル(前年比+2.1%)でした。一方、IBEF(インド政府商工省傘下のブランド・エクイティ財団)は、インドの国内繊維・アパレル市場を2025年時点で約2,250億ドル規模と見込んでいます。
国内市場(内需)
(2025年・見通し)
約2,250億ドル
年10〜12%成長(IBEF)
輸出額
(FY2025-26・全世界)
330.1億ドル
前年比+2.1%(インド繊維省)
産業の就業者数
(2026年2月時点)
4,500万人超
年間約220億着を生産(IBEF)
単純に並べると、輸出向けは市場全体のおよそ1割強、残る約9割は「インド人がインドで着る服」のための需要ということになります。これは日本の繊維産業の常識とはかなり違う構図です。
🧵 ここが実務上の分かれ道
日本の生地メーカーがインドで最初に接触するのは、たいてい「輸出縫製工場」です。英語が通じ、品質基準の話が通じ、日本と同じ言語で仕事ができるからです。しかし彼らは欧米ブランドが指定した生地を買う立場であり、自分の裁量で新しい生地を採用できる幅は限られています。一方、市場の9割を占める国内向けの買い手は、意思決定が速く自由度も高い代わりに、価格感度がまったく違います。どちらを狙うかで、営業のやり方も価格の作り方も別物になります。
出典:インド繊維省「FY2025-26 繊維輸出統計」(2026年4月22日発表);IBEF「Textile Industry & Market Growth in India」(2026年2月更新)。IBEFはFY2026(2025年4月〜2026年2月)の輸出を326.3億ドル、内訳を既製服(RMG)45%・綿製品29%・化合繊製品15%としている。国内市場規模は各機関の推計値であり、集計範囲により数値は異なる。
② 生地を買う5種類の買い手——財布も判断基準も違う
— 「インドの繊維業者」とひとくくりにしないための分類 —
インドで生地・素材を買う事業者は、大きく次の5つに分けられます。同じ「生地を買う人」でも、まったく別の商売をしていると考えてください。
買い手① 輸出縫製工場(Export House/Garment Exporter)
欧米・日本のブランド向けに服を縫って輸出する工場。インドのアパレル輸出振興評議会(AEPC)には16,000社を超える輸出業者が加盟しています(大工場から小規模縫製業者、バイイングオフィスまで含む)。
特徴:英語で商談でき、品質基準・試験成績書・納期管理の話が通じる。ただし生地を決めるのは多くの場合、発注元のブランド側。工場に売り込むだけでなく、その先のブランドに指名してもらう(=ノミネート)動きが要る。
買い手② 国内アパレルブランド・小売チェーン
インド国内の消費者向けに服を企画・販売する企業。IBEFが見込む2,250億ドル規模の国内市場の担い手です。
特徴:自社で生地を選ぶ決定権を持っているのが最大の強み。企画から店頭までのサイクルが速く、差別化素材への関心も高い。一方で想定小売価格が日本より大幅に低いため、日本製生地をそのまま持ち込むと価格が合わないことが多い。上位価格帯のブランドに絞る必要があります。
買い手③ ミル/コンバーター(Mill・Converter)
自社で紡績・織り・編み・染色加工を行う垂直統合型の工場や、生地の企画と手配だけを担う中間業者(コンバーター)。「生地を作って売る側」です。
特徴:日本メーカーにとっては競合であると同時に、最良の顧客にもなり得る相手。自社で作れない高機能素材・特殊加工を、部分的に日本から仕入れて自社コレクションに組み込むケースがあります。技術の話が最も深く通じる層でもあります。
買い手④ 布地問屋・ホールセール市場(Cloth Market/Trader)
生地を仕入れて小口で転売する問屋。合繊の集積地スーラトだけで240の市場(マーケット)に約7万の流通業者がいるとされます(texfash、2025年11月12日)。
特徴:現金取引・短納期・小ロットが基本で、圧倒的に価格勝負の世界。初めて参入する日本メーカーが直接取引する相手としては難易度が高い。ただし「インドで今どの生地がいくらで動いているか」を知るための情報源としては極めて有用です。
買い手⑤ サリー・エスニックウェア業態
サリー、サルワール・カミーズなどインド固有の衣装を扱う層。サリー市場だけで2025年に61.5億ドル規模、2034年に107.7億ドル(年6.43%成長)と推計されています。ただし約80%が非組織(インフォーマル)セクターです(IMARC、2026年)。
特徴:日本人には最も馴染みが薄い市場ですが、薄地・光沢・ドレープ性・プリント適性といった日本の合繊が得意とする領域と重なる部分があります。一方で非組織セクターの比率が高く、与信・支払い条件の管理が難しい領域でもあります。
5種類を一覧で比較すると次のとおりです。
| 買い手 | 生地の決定権 | 価格感度 | 商談のしやすさ | 初参入の狙い目 |
|---|---|---|---|---|
| ① 輸出縫製工場 | 低〜中(ブランド指定が多い) | 中 | 高い(英語・品質基準が通じる) | ◎ 最初の接点として最有力 |
| ② 国内ブランド・小売 | 高い(自社で決める) | 非常に高い | 中 | ○ 上位価格帯ブランドに限定 |
| ③ ミル・コンバーター | 高い | 中 | 高い(技術の話が通じる) | ◎ 高機能素材なら最有力 |
| ④ 布地問屋 | 高い | 極めて高い | 低い | △ 情報収集先として活用 |
| ⑤ サリー・エスニック | 高い | 高い | 低い(約80%が非組織) | △ 合繊メーカーは中期的に検討 |
ここが重要:この表の「初参入の狙い目」は、本シリーズが対象とする年商10〜100億円規模・インド販売経験ゼロの日本メーカーを前提とした整理です。人員も渡航予算も限られる規模では、①輸出縫製工場と③ミル・コンバーターの二つに絞るのが現実的です。この2つは英語で技術的な会話が成立し、ロットもまとまり、支払いも比較的整っているためです。
出典:AEPC(アパレル輸出振興評議会)公式サイト「About AEPC」(会員数16,000社超);IBEF「Textile Industry & Market Growth in India」(2026年2月);texfash「On the Edge: Can India’s Synthetic Hub Weave Scale with Sustainability?」(2025年11月12日);IMARC「India Saree Market」(2026年)。表中の「決定権」「価格感度」「商談のしやすさ」は、上記各資料に記載された各業態の性質を整理したものです。
③ 産地地図——どこへ行けば自社の買い手がいるか
— インドの繊維産業は「都市ごとに専門が違う」 —
インドの繊維産業は、日本の産地と同じように都市ごとに専門分野がはっきり分かれています。「インドに営業に行く」ではなく「ティルプールに行く」「スーラトに行く」と言えるようになることが、最初の実務的な進歩です。Invest India(インド政府の投資促進機関)が挙げる主要クラスターは次のとおりです。
| 都市(州) | 専門分野 | 確認できる規模・特徴 | 主な買い手タイプ |
|---|---|---|---|
| ティルプール (タミル・ナードゥ) | ニット製品・技術繊維 | FY2025-26のアパレル輸出 4兆2,544億ルピー(約44億ドル)/前年比 −4.91% | ① 輸出縫製工場 |
| スーラト (グジャラート) | 化合繊(MMF)生地・染色加工 | 1日6,000万メートルの合繊生地/織機約70万台/加工場約400/全国MMF生地の約40%/市場240・流通業者約7万 | ③ ミル・④ 問屋・⑤ サリー |
| コインバトール (タミル・ナードゥ) | 技術繊維(テクニカルテキスタイル) | Invest Indiaが技術繊維ハブと位置づけ。技術繊維の輸出はFY2024-25に15%超の伸び | ③ ミル・コンバーター |
| アーメダバード (グジャラート) | 合繊・MMF系textile(デニム含む) | Invest Indiaがスーラトと並ぶ合繊拠点と位置づけ | ③ ミル・コンバーター |
| ルディアナ (パンジャブ) | ホージャリー(メリヤス)・冬物・産業用繊維 | 国内向け冬物衣料の中心地 | ② 国内ブランド・④ 問屋 |
| パーニパット (ハリヤナ) | ホームテキスタイル(寝装・カーペット等) | Invest Indiaが「ホームテキスタイルの世界的ハブ」と位置づけ | ① 輸出縫製工場 |
| ビワンディ/ イチャルカランジ(マハラシュトラ) | パワールーム(力織機)・量産生地 | Invest Indiaがパワールーム・付加価値生地の拠点と位置づけ | ③ ミル・④ 問屋 |
🧵 産地選びの実務的な考え方
ニット・カットソー系の素材を持つなら → ティルプール。インドのニット輸出が集中しており、輸出縫製工場(買い手①)が最も密集しています。
合繊・機能性素材を持つなら → スーラト+アーメダバード。1日6,000万メートルという規模は、日本の合繊産地とは桁が違います。ここは量では絶対に勝てないため、量産品ではなく「スーラトで作れないもの」を持ち込む前提になります。
産業資材・不織布・高機能素材なら → コインバトール。技術繊維(テクニカルテキスタイル)はインド政府が育成分野として力を入れており、FY2024-25の輸出は15%超伸びています。
出典:Invest India「India’s textile transformation: Technical textiles, MMF and state-level manufacturing clusters poised for global growth」(クラスター区分、技術繊維輸出+15%超・MMF輸出+6.5%〈FY2024-25〉、FY2025輸出378億ドル・貿易黒字282億ドル);ティルプール輸出業者協会(TEA)発表〈Textile Times、2026年6月8日報道〉(FY2025-26 4兆2,544.40億ルピー/FY2024-25 4兆4,747億ルピー、−4.91%);texfash(2025年11月12日)(スーラトの生産量・織機数・加工場数・市場数)。スーラトの日産量は資料により2,500万〜6,000万メートルと幅があります。本稿はtexfashの記載値を採用しています。
④ 競争相手は誰か——「中国製生地」という既定路線
— 参入前に必ず直視すべき現実 —
インドの買い手が「輸入生地」と言うとき、その頭にあるのはほぼ中国製です。日本製ではありません。ここを正面から理解しないまま価格表を出すと、商談は一度で終わります。
インドの生地輸入に
占める中国の割合
約62%
生地輸入全体ベース
ニット生地の輸入に
占める中国の割合(2024年)
約79%
対中輸入額 6億5,378万ドル
中国からの生地輸入額
(2022-23年度)
64億ドル
合繊・ニットが中心
つまりインドの買い手にとって、「輸入生地=中国製の価格」が基準値(ベンチマーク)になっています。日本製の生地はこの基準に対して数倍の価格になることが通常です。この差を「品質で説明できるか」が、シリーズ全体を通じた最大の論点になります。
⚠️ 知っておくべき「見えない価格差」——アンダーバリュー問題
インドの繊維業界団体からは、輸入生地の30〜40%が過少申告(アンダーバリュー)されているとの指摘が出ています(All India Knitters’ Association の推計)。専門家からは、過少請求(アンダーインボイス)や密輸により実際の流入量が統計より20〜30%多い可能性も指摘されています。
実務上の意味:正規の通関手続きを踏む日本メーカーは、統計上の中国製価格よりもさらに安い「実勢価格」と比較されることがあります。価格表だけで勝負しない売り方を、最初から設計しておく必要があります。
出典:Fashionating World「The Fabric of Trade: Chinese imports loom large over India’s textile industry」(2024年2月19日、対中生地輸入64億ドル〈2022-23年度〉、輸入生地の70%超が合繊、All India Knitters’ Association推計);国連COMTRADEベース各種集計(Trading Economics/IndexBox、2024年ニット生地の対中輸入6億5,378万ドル・シェア79%、第2位はバングラデシュで3.9%)。中国シェア「約62%」は生地輸入全体に関する業界報道値です。
⑤ 自己診断——自社の生地はどのセグメントに刺さるか
— 渡航前に社内で答えを出しておく6つの質問 —
ここまでの内容を、自社に当てはめて整理します。下の6問に社内で答えを出してから渡航してください。答えが出ていない状態で展示会に行っても、名刺が増えるだけで終わります。
✅ 渡航前チェックリスト(6問)
Q1. 最小ロットは何メートルか?
→ 1色1,000m以上が必須なら、買い手④問屋・⑤サリー系は現実的ではありません。①輸出縫製工場・③ミルに絞ります。
Q2. 自社の生地は「スーラトで作れないもの」か?
→ 1日6,000万メートルの合繊産地と同じ土俵の汎用品なら、価格では勝てません。加工技術・機能性・色の再現性など、設備や技能で差がつく領域を1行で説明できるかが分かれ目です。
Q3. 中国製の何倍の単価になるか、把握しているか?
→ 「3倍」なのか「10倍」なのかで、狙うべき買い手が変わります。まだ計算していない場合は、第2回(上陸コストの計算)で必ず数字にします。
Q4. 最終製品はインド国内で売られるのか、輸出されるのか?
→ 輸出向けなら、実質的な決定権は欧米ブランド側にあります。誰に指名してもらうべき生地なのかを先に定義します。
Q5. 英文の試験成績書・素材規格書はあるか?
→ 買い手①③との商談では必ず求められます。日本語の社内規格しかない場合、それだけで商談が止まります。
Q6. サンプルを何週間で出せるか?
→ インドの商流は日本より短サイクルです。色出しに8週間かかる体制のままでは、②国内ブランドの企画サイクルに乗れません。
🧵 診断結果の読み方
Q1で小ロット対応可・Q2で明確な独自性あり → ③ミル・コンバーター狙い。技術の話が最も通じ、日本の素材が単価差を説明しやすい相手です。
Q1でロット大・Q5の書類が揃っている → ①輸出縫製工場狙い。まとまった数量が動き、品質基準の共通言語があります。
Q2で「汎用品」と答えが出た場合 → 参入判断そのものを再検討します。これは後ろ向きな結論ではなく、渡航前に分かったこと自体が大きな成果です。
⑥ 追い風——日系企業のインド事業拡大意欲は高止まり
— 「今なぜインドか」の客観的な裏づけ —
最後に、参入環境について確認できる事実を挙げます。ジェトロ(日本貿易振興機構)が2025年11月26日に発表した「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(調査期間2025年8月19日〜9月17日、有効回答5,109社)では、「インドでは現地需要の拡大を理由に拡大意欲の上昇傾向が続いた」と報告されています。
繊維分野に特化した動きとしては、インド最大の繊維見本市Bharat Tex 2026(ニューデリー)に、JIIPA(日印産業推進協会)の協力によるジャパンパビリオンが設けられ、日本の繊維・機械・サステナブル製造技術が出展されています。「日本の繊維技術をインドに紹介する枠組み」は、すでに存在しています。
🔎 補足:株式会社インフォアイはJIIPAの理事を務めています
本シリーズを執筆しているインフォアイは、日印産業推進協会(JIIPA)の理事企業であり、東京とインドの2拠点で20年以上、繊維業界の現地業務に携わってきました。展示会・現地商談の具体的な進め方は第4回で詳述します。
出典:ジェトロ「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(2025年11月26日発表、調査期間2025年8月19日〜9月17日、有効回答5,109社);Bharat Tex 2026 ジャパンパビリオン(JIIPA協力)に関する各種公表資料。
📊 第1回のまとめ——買い手地図の要点
✅ 内需が主戦場:輸出330.1億ドルに対し国内市場は2,250億ドル規模。輸出向けは全体の1割強にすぎない。
✅ 買い手は5種類:①輸出縫製工場 ②国内ブランド ③ミル・コンバーター ④布地問屋 ⑤サリー・エスニック。決定権・価格感度・商談難易度がすべて異なる。
🎯 初参入の現実解:年商10〜100億円規模なら、まず①輸出縫製工場と③ミル・コンバーターの2つに絞る。
🗺️ 産地で行き先を決める:ニット=ティルプール/合繊=スーラト・アーメダバード/技術繊維=コインバトール/ホームテキスタイル=パーニパット。
⚠️ 基準値は中国製:生地輸入の約62%、ニット生地の約79%が中国製。さらにアンダーバリューの指摘もあり、実勢価格は統計より低い可能性がある。
🔑 次にやること:渡航前チェックリスト6問に社内で答えを出す。特にQ2「スーラトで作れないものか」が全体の分岐点になる。
⑦ 留意点・前提条件
- 市場規模は推計値:国内市場「約2,250億ドル」はIBEFの見通し値であり、集計範囲(小売ベースか出荷ベースか等)により機関ごとに数値が異なります。IMARCは2025年のインド繊維・アパレル市場を2,487億ドルとしています。輸出額との単純比較は目安としてお読みください。
- 会計年度の違い:インドの会計年度(FY)は4月〜翌3月です。本稿の「FY2025-26」は2025年4月〜2026年3月を指し、暦年ベースの統計とは対象期間が異なります。
- スーラトの生産量には幅があります:1日あたりの合繊生地生産量は資料により2,500万〜6,000万メートルと開きがあります。本稿はtexfash(2025年11月12日)の6,000万メートルを採用しました。
- 中国シェアの数値:「生地輸入の約62%」「ニット生地の約79%」は集計対象品目(HS分類)と年次が異なる別々の統計に基づく数値です。同一基準の比較ではありません。
- アンダーバリューは業界団体の推計:「輸入の30〜40%が過少申告」はAll India Knitters’ Associationの推計であり、政府による確定値ではありません。
- 買い手分類は整理のための枠組み:本稿の5分類は、公表資料に現れる業態を実務上の判断に使いやすい形に整理したものです。実際には複数の機能を兼ねる事業者も多く存在します。
- 本稿に価格の推奨は含みません:具体的な関税率・上陸コストの計算方法は第2回で扱います。
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第2回:値段の壁を最初に計算する——上陸コスト(landed cost)の作り方
HSコードの特定から、基本関税(BCD)・農業インフラ開発税(AIDC)・社会福祉課徴金・IGST(統合物品サービス税)・通関費用・内陸輸送までを積み上げ、「日本の工場出荷価格が、インドの買い手の手元でいくらになるのか」を自分で計算できるようにします。日印EPA(CEPA)の特恵税率と原産地証明の実務も扱います。
主要引用・参照元一覧
- インド繊維省(Ministry of Textiles)「FY2025-26 繊維輸出統計」(2026年4月22日発表)
- IBEF(India Brand Equity Foundation)「Textile Industry & Market Growth in India」(2026年2月更新)
- Invest India「India’s textile transformation: Technical textiles, MMF and state-level manufacturing clusters poised for global growth」
- ティルプール輸出業者協会(Tiruppur Exporters’ Association/TEA)発表 — Textile Times「Tiruppur Garment Exports Decline 4.9% in FY26」(2026年6月8日)
- AEPC(Apparel Export Promotion Council)「About AEPC」(公式サイト)
- texfash「On the Edge: Can India’s Synthetic Hub Weave Scale with Sustainability?」(2025年11月12日)
- Fashionating World「The Fabric of Trade: Chinese imports loom large over India’s textile industry」(2024年2月19日)
- 国連COMTRADEベース各種集計(Trading Economics/IndexBox、2024年ニット生地輸入)
- IMARC Group「India Saree Market」「Indian Textiles and Apparel Market」(2026年)
- ジェトロ(JETRO)「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(2025年11月26日発表)
※本稿は公開情報の要約・整理を目的とした実務ガイドであり、投資・取引の助言を意図するものではありません。数値は執筆時点で確認できた各機関の公表資料・報道に基づきます。関税率・規制・市場データは変動しますので、実際のご判断にあたっては最新の一次情報をご確認ください。
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繊維商社にてインド生産を中心とした業務に12年間従事。現地工場との生産管理や品質管理、繊維ビジネスの実務経験を積む。その後、2002年にインドと日本を拠点とする株式会社インフォアイを設立。繊維業界向けのクラウドソリューション開発や画像加工サービス「キリコム」を中心に事業を展開。現在は繊維業向けクラウド「KIRIKOM PLUS」など、繊維業界の業務効率化とデジタル化を目的としたソリューションを日本・海外の企業に提供している。
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