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第4回 展示会・現地商談の進め方——サンプル・価格表・通訳・アポの取り方

実践ガイド 全6回・第4回 / インドで生地を売る

展示会・現地商談の進め方——サンプル・価格表・通訳・アポの取り方

— インドの主要繊維展示会と時期、持って行くサンプルの形、英語価格表の書き方、通訳の使い方、見積もり後の沈黙への対処 —

日本貿易振興機構(ジェトロ)・Bharat Tex Trade Federation(繊維輸出振興団体コンソーシアム、インド繊維省後援)・Messe Frankfurt Trade Fairs India/MATEXIL/ITTA・AEPC(アパレル輸出振興評議会)・CMAI(衣料品製造業者協会)・SGCCI(南グジャラート商工会議所)・特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)ほか各機関・各展示会主催者の公表資料をもとに編集。本稿は確認済みの一次資料のみを掲載し、推論・予測的解釈は含まない。確認できなかった項目は「未確認」として明記している。

ここまで、第1回(買い手地図)で誰に売るかを、第2回(上陸コスト)でいくらで売れるかを、第3回(規制の関門)で法的に入るかを確認してきました。準備は整いました。次は実際にインドへ行き、買い手と顔を合わせる段階です。

本稿では、どの展示会に行くべきかという選択から、持参するサンプルの形英語の価格表に何を書くべきか通訳をどう使うか、そして初めての渡航で誰もがつまずく「見積もりを送ったのに返信が来ない」への対処まで、現地商談の実務を順番に整理します。

一言でまとめると:インド最大の繊維見本市Bharat Tex 2026(2026年7月14〜17日開催)は138カ国・約9万5千人が参加する規模で終了し、日印国際産業振興協会(JIIPA)のジャパンパビリオンも出展したが、次回開催時期は本稿執筆時点(2026年8月)で未発表。生地メーカー自身にとっては、むしろCMAI主催の生地・副資材専門見本市「FAB Show」や、技術繊維を扱うならTechtextil Indiaの相性がよい。サンプルは「代表色の現物+残りは色見本カード」を商談前に送付するのが定石(ジェトロ)。価格表はプロフォーマインボイスの形式で、EXWを基準にFOB/CIFへ換算し、数量・支払条件・適用為替レート・有効期限を明記する(ジェトロ)。通訳は機械翻訳に頼らずプロを手配し、事前に自社情報を共有するのが鉄則。見積もり後の沈黙には商談当日〜翌日のフォローアップを徹底したうえで、「沈黙=関心なし」と決めつけずに気長に構えることが実務上のポイントになる。

✏️ 編集後記
本稿は全6回シリーズ「インドで生地を売る」の第4回。買い手(第1回)・価格(第2回)・規制(第3回)という「机上の準備」から、初めて現地に足を運ぶ段階に移る回である。展示会情報やサンプル・価格表の作法は変化しやすく、確認できた一次資料が限られる論点(サンプルの色数の目安、通訳の地域言語別対応、フォローアップの具体的な頻度など)も多い。本稿では確認できた事実と、確認できなかった事実を明確に分けて記載した。次回・第5回では、商談が成立したあとの契約書の要点・支払い条件・品質クレーム対応を扱う。なお第2回で予告した取引形態(FOB/CIF/DDPの選択)は、シリーズ最終回の第6回で詳しく扱う。

この記事の内容

① 先に答え——展示会は「数」ではなく「自社に合うか」で選ぶ

② インドの主要繊維展示会と開催時期

③ 持って行くサンプルの形——反物一巻きより「代表サンプル+色見本カード」

④ 英語価格表の書き方——プロフォーマインボイスに何を書くか

⑤ 通訳の使い方——機械翻訳に頼らない、事前ブリーフィングを徹底する

⑥ 見積もりを送ったのに返信が来ない——フォローアップの型

⑦ 商談前チェックリスト——7問で準備を確認する

⑧ 留意点・前提条件

① 先に答え——展示会は「数」ではなく「自社に合うか」で選ぶ

— インドの繊維見本市は年間を通じて数多く、全部には行けない —

インドには繊維関連の展示会が数多く存在し、規模も対象買い手もまちまちです。「とりあえずインド最大の展示会に行く」のではなく、第1回で整理した買い手類型(①輸出縫製工場/③ミル・コンバーターを中心に狙う)に合わせて選ぶことが実務上の出発点になります。まず全体像を一覧で確認してください(詳細は②)。

展示会主催性格生地メーカーとの相性
Bharat TexBharat Tex Trade Federation(繊維輸出振興11団体、繊維省後援)全繊維バリューチェーンを網羅する国家的旗艦見本市。JIIPAジャパンパビリオンも出展◎ 全買い手類型
FAB Show
(Fabrics, Accessories & Beyond)
CMAI(衣料品製造業者協会)インド最大級とされる生地・副資材専門の調達見本市◎ 生地に最も直接的
Techtextil IndiaMesse Frankfurt Trade Fairs India/MATEXIL/ITTA技術繊維(不織布・複合材等)専門◎ 第3回の技術繊維4分野を扱う会社に最有力
IIGF
(India International Garment Fair)
AEPC(アパレル輸出振興評議会)年2回(1月・7月)開催の輸出縫製工場向け商談会○ 買い手①との人脈構築に
スーラト地域見本市
(SITEX/SITME/Global Fabric Expo等)
SGCCI(南グジャラート商工会議所)ほか合繊生地の地場見本市。1〜2月・6月に集中○ 買い手③④向け・価格勝負の市場
ティルプール地域見本市
(Yarnex/TexIndia/Knit Show等)
SS Textile Media ほかニット・糸専門の地場見本市。3月・8月・9月に開催○ ニット系の買い手①③向け

ここが重要:年商10〜100億円規模で渡航回数が限られるなら、初回は「①Bharat Tex(全体の空気感と買い手の顔ぶれを見る)」か「②FAB Show(生地・副資材の実需に直接触れる)」のどちらかに絞るのが現実的です。技術繊維を扱う会社はTechtextil Indiaを優先してください。

出典:各展示会の主催団体公表資料(詳細出典は②に記載)

② インドの主要繊維展示会と開催時期

— 2026年の実績とカレンダー。次回時期が未確定のものも多い —

🔎 Bharat Tex 2026——138カ国・約9万5千人が参加し終了

Bharat Tex 2026(第3回)は2026年7月14〜17日、ニューデリーのBharat Mandapamで開催されました(過去2回は2月開催で、今回は7月に時期が変更されています)。主催は繊維輸出振興団体11団体からなるBharat Tex Trade Federation(BTTF)で、繊維省が後援しています。ギリラージ・シン繊維相が開幕式に出席しました。

確定した実績:出展社1,647社、来場者数は業界買い手11,315名(うち海外バイヤー6,090名)を含む約9万5千人、参加国・地域は138。繊維投資提案額1兆4,300億ルピー、商談総額は約28億米ドル相当、開催初日から3日間でB2B商談28,500件超。

日印国際産業振興協会(JIIPA)のジャパンパビリオンも出展し、日本の繊維技術・機能性素材・先端繊維・機械/自動化・サステナブル製造技術を紹介しました。JIIPAは開催前に大阪でロードショーを実施し、日本語ポータルサイトも開設しています。本シリーズの発行元インフォアイはJIIPAの理事企業です(第1回参照)。

⚠️ 次回Bharat Texの開催時期は未発表

本稿執筆時点(2026年8月)で、次回開催時期を確認できる公表資料はありません。Bharat Texは2024年2月・2025年2月・2026年7月と開催時期そのものが変動しており、「例年◯月」と決め打ちできない展示会です。渡航計画を立てる際は、公式サイトまたはJIIPA・JETRO経由で最新の開催告知を必ず確認してください。

Bharat Tex以外にも、生地メーカーが実務上押さえておくべき展示会があります。

展示会直近の開催実績・予定会場規模
FAB Show(第6回)2026年4月2〜4日ボンベイ展示センター(ムンバイ)出展社250社超
Techtextil India(第10回)2025年11月19〜21日(次回時期は本稿執筆時点で未確定)ボンベイ展示センター(ムンバイ)出展社216社(300超ブランド)、来場者9,144名(インド235都市・海外45カ国)
IIGF(第74回)2026年1月23〜25日(年2回、1月・7月開催)Yashobhoomi(ニューデリー)出展社400社超
F&A Show + Apparel Sourcing Fair2026年2月6〜8日Trade Centre, KTPO(バンガロール)生地・副資材の調達見本市
SITEX(第13回・スーラト)2026年2月21〜23日SIECC(スーラト)出展社110社超、150都市超から3万人規模の来場見込み
Global Fabric Expo(スーラト)2026年6月SIECC(スーラト)出展社200社超、B2B来場約2.5万人見込み
Knit Show(ティルプール)2026年8月21〜23日Toplight Center(ティルプール)ニット製品専門
Yarnex/TexIndia(ティルプール)2026年9月24〜26日インド・ニットフェア協会会場(ティルプール)糸・ニット素材の国際見本市
India ITME2026年12月4〜9日India Expo Centre & Mart(グレーターノイダ)繊維機械が中心。出展社1,800社超見込み(原糸・生地から技術繊維まで全バリューチェーン対応)

ここが重要:この一覧を並べると、主要な繊維関連見本市は11月〜4月に集中し、6月〜9月は相対的に少ないという傾向が読み取れます(これは本稿が確認した開催実績を並べた結果であり、特定機関が「この時期がよい」と推奨しているわけではありません)。Bharat Tex自体は今回7月開催でしたが、これは例年の傾向というより今回固有の日程変更である点に注意してください。

🧵 IIGFが年2回である理由——買い手の企画サイクルに合わせる

AEPC主催のIIGFが1月(秋冬向け)と7月(春夏向け)の年2回開催されているのは、輸出縫製工場(買い手①)のシーズン企画サイクルに対応しているためです。生地メーカーが商談時期を決める際も、「買い手が今どのシーズンの生地を探しているか」を逆算する視点が有効です。

出典:Fibre2Fashion「Bharat Tex 2026 opens in New Delhi with 1,600 exhibitors」(2026年7月13〜14日)/Agrotextiles.in「Bharat Tex 2026 Records ₹14,300 Crore Investments, 95,000 Visitors and Global Business Success」(2026年7月21日)/oneindia.com「Bharat Tex 2026 to Showcase India’s Textile Strength with Global Participation from Over 130 Countries」(2026年7月13日)/japancalling.in「Japan Pavilion Draws Strong Interest at Bharat Tex 2026」(2026年7月15日)/在ザグレブ・インド大使館告知(Bharat Tex 2026会期・会場)/Textile World Asia「Techtextil India 2025 Concludes On A Stellar Note」(2026年1月4日)/在ハーグ・インド大使館告知(第74回IIGF)/在ブダペスト・インド大使館告知(第73回IIGF)/globaltextilesource.com「F&A Show 2026」告知(2026年)/exhibitionglobe.com/infashionbusiness.com「CMAI To Host FAB Show 2026 In Mumbai」(2026年)/firstindia.co.in・lokmattimes.com「SITEX 2026」告知(2026年)/fibre2fashion.com 展示会情報「Global Fabric Expo 2026」/knitshow.in 公式告知/10times.com 見本市情報(Yarnex/TexIndia、ティルプール、2026年)/textilesphereindia.com「India ITME 2026」(2026年3月31日)。Techtextil Indiaの次回開催時期および一部の細目は情報源により表記が異なるため、渡航決定前に主催者公式サイトで最終確認してください。

③ 持って行くサンプルの形——反物一巻きより「代表サンプル+色見本カード」

— ブースで見せる量と、商談前に送る量は別に考える —

初めて渡航する日本メーカーが悩むのが「サンプルは反物で持って行くべきか、色見本帳でよいのか」という点です。ジェトロの実務資料からは、次の2点が確認できます。

🔎 ブースでの見せ方:代表サンプル+色見本カード

ジェトロの展示会出展ガイドは、色展開が多い商材について「代表的な色の現物サンプルを提示しつつ、残りの色は色見本カードで見せる」形が実務的だとしています。あわせて組成・使用/お手入れ方法などの情報をブースに用意することも推奨されています。反物一巻きをすべての色数分持ち込む必要はありません。

🧵 サンプルは「商談当日に見せる」のではなく「商談前に送る」

ジェトロの商談スキルセミナーでは、可能な限りサンプルは商談の前に買い手へ送付しておくことが推奨されています。展示会当日に初めて実物を見せるのではなく、買い手が事前に触れて検討できる状態を作るという考え方です。

日程的に事前送付が間に合わない場合は、動画による説明や、これまでの取引実績を示す資料で代替することが提案されています。展示会に行く前に、第1回で絞り込んだ商談候補先へサンプルを送っておけるかどうかを検討してください。

⚠️ 「色数の目安」はインド市場に特化した確定情報を確認できていません

「何色そろえるべきか」という具体的な目安について、インドの繊維業界に特化した公的資料は確認できませんでした。本稿で示せるのはジェトロの一般的な展示会出展ガイドに基づく考え方までです。実際の色数は、商材の特性と買い手のカテゴリー(第1回参照)に応じて個別に判断してください。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所「展示会出展時の留意点-取引を成功させるには(米国のデザイン・日用品分野最新トレンドシリーズ(3))」(2023年2月14日)/ジェトロ「オンライン商談のコツ、ジェトロ職員によるセミナーを開催」ビジネス短信(2021年3月16日)

④ 英語価格表の書き方——プロフォーマインボイスに何を書くか

— 「値段だけ書いた紙」は価格表ではない —

日本の輸出実務では、商談段階の見積書としてプロフォーマインボイス(Pro Forma Invoice)という形式が標準的に使われます。通関で使う商業インボイス(コマーシャルインボイス)とは別物で、商談・受注確認の段階の「正式な見積書」にあたります。

🔎 ジェトロが示す価格提示の基本構造

①価格の基準はEXW(工場渡し)に置き、そこからFOB・CFR・CIF(在来船の場合)またはFCA・CPT・CIP(コンテナ貨物の場合)に換算して提示する。

②最低発注数量(MOQ)を、数量単位(箱・パレット・コンテナ等)または金額基準で明記する。

③支払い方法・条件を明記する(T/T送金かL/C信用状か。それぞれ銀行手数料が発生する点も含めて)。

④価格算出時に使用した為替レートと、価格の有効期限(バリデイティ)を価格表に明記する。

📐 生地の価格表・プロフォーマインボイスに載せるべき項目(実務チェックリスト)

✅ 品名・HSコード(第2回参照) ✅ 組成(混用率) ✅ 目付(g/m²)と有効幅 ✅ 色番号・色数
✅ MOQ(最低発注数量) ✅ リードタイム ✅ 価格条件(FOB/CIF等、第2回の計算例参照)と通貨建て
✅ 支払い条件(T/T/L/C) ✅ 適用為替レートと算出日 ✅ 価格の有効期限

🧵 第2回の計算をそのまま価格表に落とし込む

第2回では、日本出荷1,000円/mの生地をFOB日本港 US$6.48/m、CIFナヴァ・シェヴァ港 US$6.80/mと算出しました。この2つの数字は、そのまま本項のプロフォーマインボイスの「価格条件」欄に書く数字です。買い手の手元原価(約815ルピー/m)は見積書には書かず、商談の口頭説明で補足するという第2回⑦の使い分けを、価格表作成の段階から徹底してください。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「輸出価格の算定方法」貿易・投資相談Q&A(最終更新2026年6月)/ジェトロ「貿易実務の流れ」図解・貿易のしくみ(ジェトロウェブサイト)

⑤ 通訳の使い方——機械翻訳に頼らない、事前ブリーフィングを徹底する

— 通訳者は「言葉を訳す人」ではなく「事前に自社を理解させておく相手」 —

インドでの商談は英語で成立することも多いですが、細かい条件のすり合わせや現地語話者との商談では通訳が必要になります。ジェトロの商談スキルセミナーは、次の点を明確にしています。

🔎 「機械翻訳ではなく通訳者を手配し、事前に情報共有する」

ジェトロは、商談中に通訳が必要な場合は機械翻訳ではなく通訳者を手配すること、そして事前に自社の情報を通訳者へ伝えておくことで買い手とのやりとりが円滑に進むことを明確にガイドしています。当日いきなり通訳に入ってもらうのではなく、自社商材・専門用語・商談の狙いを事前にインプットしておくのが実務上のポイントです。

🧵 通訳の手配先——JIIPAという選択肢

ジェトロは通訳・翻訳の民間サービス事業者を紹介する仕組み(JS-Links)を提供しています。加えて、日印国際産業振興協会(JIIPA)は英語・ヒンディー語・日本語での通訳/翻訳手配を、インドで事業展開する日本企業向けに提供しています。第1回で述べたとおり、本シリーズの発行元インフォアイはJIIPAの理事企業であり、繊維分野の商談に即した通訳手配の相談先として活用できます。このほか、インド専門の通訳ディスパッチサービス(日英ヒンディー対応)も存在します。

⚠️ 産地ごとの言語事情は確定情報を確認できていません

「ティルプールはタミル語、スーラトはグジャラート語が中心」といった産地別の言語事情については、公的機関が発表した確定資料を確認できませんでした。英語での商談が広く通用する層(買い手①③、第1回参照)が中心である一方、地場の問屋・小規模事業者では現地語が必要になる場面もあり得ます。訪問先が決まった時点で、通訳手配先に必要な言語を個別に確認してください。

出典:ジェトロ「オンライン商談のコツ、ジェトロ職員によるセミナーを開催」ビジネス短信(2021年3月16日)/ジェトロ「JS-Links 海外ビジネスに係るサービスプロバイダーリスト」(インターグループ社ページ、最終更新2024年3月)/特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)ウェブサイト「Translation」ページ(npo-jiipa.org)

⑥ 見積もりを送ったのに返信が来ない——フォローアップの型

— 初めての海外商談で、ほぼ全員が経験する壁 —

サンプルを送り、価格表を提示し、商談も悪くない手応えだった——それなのに、その後の返信が途絶える。これは特別な失敗ではなく、海外B2B商談ではよくある展開です。対処は2段階に分けて考えます。

🔎 段階1:商談直後は「当日、遅くとも翌日」にフォローする

ジェトロの商談スキルセミナーは、商談後のフォローアップは当日、遅くとも翌日には行うことを明確にガイドしています。内容は、合意事項の確認、宿題として持ち帰った質問への回答、追加資料の送付です。これは「返信が来ない」状態になる前に、売り手側がまずやるべき行動です。

🧵 段階2:それでも沈黙が続く場合——「関心なし」と決めつけない

輸出企業向けの実務解説では、「返信がないこと」は必ずしも「関心がないこと」を意味しないとされ、買い手によっては1週間後に、別の買い手では1か月後にようやくフォローアップが必要になるなど、反応の速さは相手次第で大きく変わると指摘されています。トーンは強い売り込みではなく、軽い確認・小さな追加情報の共有程度にとどめることが推奨されています。

インド最大級のB2BプラットフォームであるIndiaMARTも、出品者に対して問い合わせへは「できるだけ早く」回答するよう指導しています。裏を返せば、買い手側にも早期回答の文化的圧力があるため、返信が遅い場合は多忙・社内稟議など事務的な事情である可能性を考慮してよいということです。

⚠️ 「何回・何日おきに送るべきか」という確定した目安はありません

インドの買い手向けに「見積もり後の未回答に対して何回・何日間隔でフォローすべきか」を具体的に定めた公的機関の資料は確認できませんでした。本稿で提示できる確定情報はジェトロの「商談当日〜翌日」ルールのみです。その後の粘り強いフォローについては、一般的な輸出実務の考え方として「気長に、しかし定期的に」構える以上の具体的な頻度を断定しないでください。

出典:ジェトロ「オンライン商談のコツ、ジェトロ職員によるセミナーを開催」ビジネス短信(2021年3月16日)/ClickReach「Why Export Businesses Lose Deals Months After the First Email」(clickreach.io、2026年7月10日)/IndiaMART InterMESH Ltd.「How soon should I respond to buyer enquiries?」(help.indiamart.com、2025年3月6日更新)

⑦ 商談前チェックリスト——7問で準備を確認する

— 渡航前に社内で答えを出しておく —

Q1. 自社が狙う買い手類型(第1回)と時期に合った展示会を選定したか?

Q2. 候補先に対し、代表色の現物サンプルと色見本カードを商談前に送付できているか?

Q3. 英語のプロフォーマインボイスに、HSコード・組成・目付・有効幅・MOQ・リードタイム・支払い条件・適用為替レート・有効期限を明記したか?

Q4. 通訳は機械翻訳ではなくプロを手配し、事前に自社情報・専門用語を共有したか?

Q5. 商談当日〜翌日にフォローアップメールを送る体制を、渡航前に決めているか?

Q6. 返信が途絶えた場合の再送スケジュール(誰が、いつ)を事前に決めているか?

Q7. 産地地図(第1回)・上陸コスト(第2回)・規制の関門(第3回)の内容を、商談の場で聞かれても即答できる状態か?

📊 第4回のまとめ——現地商談の実務

🏛️ Bharat Tex 2026は138カ国・約9万5千人規模で終了:JIIPAジャパンパビリオンも出展。ただし次回開催時期は未発表

🧵 生地メーカーに合う展示会:生地・副資材専門のFAB Show、技術繊維ならTechtextil Indiaが有力。地場見本市(スーラト・ティルプール)は買い手③④向け。

🎨 サンプルは「代表現物+色見本カード」を商談前に送付:反物全色を持ち込む必要はない(ジェトロ)。

📄 価格表はプロフォーマインボイス形式:EXW基準からFOB/CIFへ換算し、MOQ・支払い条件・為替レート・有効期限を明記。第2回のFOB US$6.48/m・CIF US$6.80/mをそのまま使う。

🗣️ 通訳は機械翻訳NG、事前ブリーフィング必須:JIIPAの通訳/翻訳支援も選択肢。

🔑 返信が来なくても焦らない:当日〜翌日のフォローは徹底しつつ、「沈黙=関心なし」と決めつけず気長に構える。具体的な頻度の確定基準はない。

⑧ 留意点・前提条件

  • 展示会情報は変更されます:会期・会場・出展社数などの実績値は各主催者の公表資料に基づく確定情報ですが、次回開催の有無・時期は展示会ごとに未発表または情報源により差異があります。特にTechtextil Indiaの次回時期は情報源間で表記が異なり、渡航計画前に公式サイトでの確認が必須です。
  • Bharat Texの開催時期は固定されていません:2024年2月・2025年2月・2026年7月と開催時期自体が変動しています。「例年◯月」という前提を置かないでください。
  • 確定情報と一般的な実務ガイダンスの区別:展示会の会期・実績数値は一次資料に基づく確定情報です。一方、サンプルの色数の目安、通訳の産地別言語事情、見積もり未回答時の具体的なフォロー頻度については、インド繊維業界に特化した公的資料を確認できず、ジェトロの一般的な貿易実務ガイダンスや輸出実務の解説記事を参考情報として援用しています。
  • サンプル・価格表・通訳の実務は自社の商材・商談規模に応じて調整してください:本稿の内容は一般的な考え方の整理であり、個別の商談における最適な進め方を保証するものではありません。
  • 本稿は法務・通関・商談の助言ではありません:実際の渡航計画・商談準備にあたっては、必要に応じてJETRO・JIIPA等の支援機関や現地の専門家にご確認ください。

Next

第5回:契約・支払い条件・品質クレーム対応——商談成立後に詰めるべきこと

展示会・商談(第4回)を経て話がまとまったら、次に詰めるべきは契約書の要点、支払い条件(前払い・信用状・分割払いの考え方)、そして品質クレームが発生した際の対応です。初回取引で特に注意すべき条項、代金回収のリスク管理、色差・品質不良が発生した場合の実務対応を整理します。取引形態(FOB/CIF/DDPの選択)はシリーズ最終回の第6回で扱います。

主要引用・参照元一覧

  • Fibre2Fashion「Bharat Tex 2026 opens in New Delhi with 1,600 exhibitors」(2026年7月13〜14日)
  • Agrotextiles.in「Bharat Tex 2026 Records ₹14,300 Crore Investments, 95,000 Visitors and Global Business Success」(2026年7月21日)
  • oneindia.com「Bharat Tex 2026 to Showcase India’s Textile Strength with Global Participation from Over 130 Countries」(2026年7月13日)
  • japancalling.in「Japan Pavilion Draws Strong Interest at Bharat Tex 2026, Highlighting Growing India–Japan Textile Partnership」(2026年7月15日)
  • 在ザグレブ・インド大使館告知「3rd edition of Bharat Tex 2026(14-17 July 2026, Bharat Mandapam, New Delhi)」(2026年)
  • 在ブラザビル・インド大使館告知「BHARAT TEX 2024」(2024年)/PM India Office発表(2024年2月)/在バグダッド・インド大使館告知、PIB/News on Air「Bharat Tex 2025」(2025年2月)— 過去2回の実績数値の出典
  • Textile World Asia「Techtextil India 2025 Concludes On A Stellar Note」(2026年1月4日)
  • textilesphereindia.com「India ITME 2026: A Catalyst for India’s Ambition to become a $100 Billion Textile Export Powerhouse」(2026年3月31日)
  • 在ハーグ・インド大使館告知「74th India International Garment Fair(IIGF)」(2025年〜2026年)/在ブダペスト・インド大使館告知「73rd India International Garment Fair」(2025年)
  • globaltextilesource.com「F&A Show 2026」告知(2026年)
  • exhibitionglobe.com/infashionbusiness.com「CMAI To Host FAB Show 2026 In Mumbai」(2026年)
  • firstindia.co.in/lokmattimes.com「SITEX – Surat International Textile Expo 2026 Organised by SGCCI」(2026年)
  • fibre2fashion.com 展示会情報「Global Fabric Expo – 2026」(2026年)
  • knitshow.in 公式告知(2026年)/exhibitionglobe.com「Knit-Tech 2026」(2026年)/10times.com 見本市情報「Yarnex」「TexIndia」(ティルプール、2026年)
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所「展示会出展時の留意点-取引を成功させるには(米国のデザイン・日用品分野最新トレンドシリーズ(3))」(2023年2月14日)
  • ジェトロ「オンライン商談のコツ、ジェトロ職員によるセミナーを開催」ビジネス短信(2021年3月16日)
  • ジェトロ「輸出価格の算定方法」貿易・投資相談Q&A(最終更新2026年6月)/ジェトロ「貿易実務の流れ」図解・貿易のしくみ
  • ジェトロ「JS-Links 海外ビジネスに係るサービスプロバイダーリスト」(インターグループ社ページ、最終更新2024年3月)
  • 特定非営利活動法人日印国際産業振興協会(JIIPA)ウェブサイト「Translation」ページ(npo-jiipa.org)
  • ClickReach「Why Export Businesses Lose Deals Months After the First Email」(clickreach.io、2026年7月10日)
  • IndiaMART InterMESH Ltd.「How soon should I respond to buyer enquiries?」(help.indiamart.com、2025年3月6日更新)

※本稿は公開情報の要約・整理を目的とした実務ガイドであり、法務・通関・投資・取引の助言を意図するものではありません。数値・展示会情報は執筆時点(2026年8月)で確認できた各機関・各主催者の公表資料に基づきます。開催時期・出展条件等は変更されますので、実際の渡航・出展計画にあたっては最新の一次情報を必ずご確認ください。

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背戸土井 貴之

Author
背戸土井 貴之 / 株式会社インフォアイ 代表取締役

繊維商社にてインド生産を中心とした業務に12年間従事。現地工場との生産管理や品質管理、繊維ビジネスの実務経験を積む。その後、2002年にインドと日本を拠点とする株式会社インフォアイを設立。繊維業界向けのクラウドソリューション開発や画像加工サービス「キリコム」を中心に事業を展開。現在は繊維業向けクラウド「KIRIKOM PLUS」など、繊維業界の業務効率化とデジタル化を目的としたソリューションを日本・海外の企業に提供している。

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