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小さなアパレル会社こそ『情報』で戦える ── AIを企画とECの情報担当にした話

先日、あるアパレル会社さんからご相談をいただきました。社員数十名、拠点は国内のみ。企画から販売まで自社でこなす、まじめで実直な会社です。社長さんの悩みは、はっきりしていました。「うちは、情報が足りていない気がする」

小さな会社というのは、放っておくとすぐに情報不足に陥ります。大手のように専門の調査部門があるわけでも、潤沢な展示会予算があるわけでもない。気づけばトレンドもEC周りの新しい動きも、半歩遅れて耳に入ってくる。そこで私がご提案し、実際に一緒に取り組んだのが、AIを一人の「情報担当」として雇うという方法でした。この記事では、その会社さんで実践したやり方を、使ったプロンプト(指示文)つきでご紹介します。

なぜ小さな会社は「情報」で不利になるのか

理由はシンプルで、情報を集めるのにも人手と時間がかかるからです。誰かがトレンドを追い、業界のニュースを読み、競合のECをチェックし、それを社内に共有する。大きな会社ではこれを分担できますが、数十名の会社では全員がプレイヤーで、誰も“調べる係”に専念できません。

この会社さんも、人数の割に手が足りていませんでした。企画担当は日々の業務に追われ、トレンドをじっくり調べる時間がない。EC担当も、目の前の運営で手一杯。だからこそ、「調べる・まとめる・共有する」という情報の仕事こそ、最初にAIに任せるべきだとご提案しました。情報の格差は、お金ではなく仕組みで埋められる。これが、今回いちばんお伝えしたいことです。

この記事のプロンプトは、ChatGPT・Claude・Geminiなど、Web検索ができる対話型AIを想定しています。太字や【 】の部分を自社の状況に置き換えてお使いください。最新情報を扱うので、検索機能をオンにして使うのがコツです。

① アパレルの「企画情報」を集める

企画の出発点は、いつも情報です。次のシーズンに何が来るのか、どんな素材・色・シルエットが動いているのか。この会社さんでは、AIに、この“地ならし”をしてもらうことから始めました。ゼロから自分で世界中の情報を追うのは無理でも、AIに論点を整理してもらえば、企画会議のたたき台はすぐにできます。

大事なのは、AIの答えをそのまま使わないこと。「うちの客層・価格帯ならどう効くか」までセットで考えさせると、ただのトレンド紹介が、自社の企画に使える材料に変わります。

プロンプト例:次シーズンのトレンドを自社向けに整理する

あなたはアパレル業界に詳しいトレンドリサーチャーです。
Web検索を使って、【2027年 秋冬】のレディース向けトレンドを
調べ、次の形で整理してください。

・素材 / カラー / シルエット / ディテール の4観点で、
 いま注目されている動きを各3点
・それぞれ「なぜ来ているのか(背景)」を一言
・最後に、【20〜30代向け・中価格帯】の当社が取り入れるなら
 どこから手をつけるべきか、優先順位をつけて提案

情報源(参照したサイトやブランド)も併記してください。

プロンプト例:素材・サステナブル動向を追う

繊維・アパレルの「素材」の最新動向を知りたいです。
Web検索を使って調べてください。

・リサイクル素材、バイオ由来素材、機能性素材で、
 2027年前後に話題になっているものを挙げてください
・採用しているブランドの例があれば一緒に
・小ロットでも調達しやすいか、コスト感はどうか、
 現実的な視点でコメントしてください

当社は小ロット対応とサステナブル素材を強みにしたいので、
「差別化に使えそうな素材」という観点で評価してください。

プロンプト例:競合・参考ブランドを分析する

次のブランドの「企画の方向性」を分析してください。
Web検索で最近の商品やコレクションを確認したうえで。

・対象ブランド:【ブランド名を1〜3社】
・分析してほしい点:
 1) どんな客層に、どんな価値を打ち出しているか
 2) 価格帯と、よく使っている素材・テイスト
 3) 当社が学べる点 / あえて違う方向に振れる点

最後に、当社の企画会議で使える「気づき」を3つにまとめて。

② ECサイトの「新しい情報」をつかむ

もう一つ、小さな会社が遅れがちなのがEC周りです。プラットフォームの仕様変更、新しい販売手法、送料や決済のトレンド、新しいモールやアプリの動き。ここは変化が速く、知らないうちに“当たり前”が変わっています。この会社さんでも、AIにECの最新情報を定点観測してもらう仕組みを作りました。

特に役立ったのが、「専門用語や新サービスを、自社にとっての意味に翻訳してもらう」使い方です。ニュースを読むだけなら誰でもできますが、「で、うちは何をすればいいの?」に落とすところまでAIに付き合ってもらうと、情報が行動に変わります。

使うときの注意:EC関連は情報の鮮度が命です。AIが古い情報を答えることもあるので、必ず検索機能をオンにし、「いつ時点の情報か」「出典はどこか」を答えさせるクセをつけてください。重要な仕様は、最後は公式サイトで確認します。

プロンプト例:ECのトレンドを定点観測する

あなたはECとD2Cにくわしいアナリストです。
Web検索を使い、【アパレル・ファッションEC】の分野で、
2027年に入ってからの新しい動きをまとめてください。

・新しい販売手法やトレンド(例:ライブコマース、UGC活用など)
・主要モール/プラットフォームの仕様変更や新機能
・送料・決済・返品まわりの新しい動き

各項目に「出典」と「情報の時点」を必ず付け、
最後に【自社の小規模ECが今すぐ試せること】を3つ挙げてください。

プロンプト例:新サービス・新機能を“自社目線”で評価する

次のEC関連の新サービス/新機能について教えてください。
Web検索で最新情報を確認してから答えてください。

・対象:【サービス名や機能名】

知りたいこと:
1. これは何で、何が新しいのか(専門用語は避けて)
2. 導入するメリット・デメリット
3. 当社のような【小規模・アパレルEC】が導入する価値はあるか、
  正直なところを率直に

最後に「今すぐ導入 / 様子見 / 不要」のどれかで結論を。

プロンプト例:自社ECの改善ヒントを得る

当社の自社ECサイトを改善したいです。
Web検索で、アパレルECの「成果につながる施策」の
最近の事例やセオリーを確認したうえで、助言してください。

・当社の状況:【国内のみ・数十名規模・自社ブランドを販売】
・特に気になる点:【商品ページの離脱が多い / リピートが弱い】

・改善のアイデアを、効果が出やすい順に5つ
・各アイデアは、社内のEC担当が来週から試せる粒度で
・「お金をかけずにできること」を優先してください

③ 集めた情報を「使える形」にして、チームで共有する

情報は、集めただけでは意味がありません。この会社さんで特に効いたのが、集めた情報を、企画・EC・営業の誰が読んでもすぐ動ける形にすることでした。長いリサーチ結果を、会議用の要点に縮める。専門用語に注釈をつけて、担当外の人にもわかるようにする。この“要約と翻訳”をAIに任せるだけで、情報が部署の壁を越えて流れ始めました。

プロンプト例:リサーチ結果を共有用に要約する

以下は、私が集めたトレンド/EC情報のメモです。
これを、社内会議で使う共有資料に整理してください。

・「3つの要点」→「だから何をするか(アクション)」の順で
・専門用語には短い注釈をつける
・企画・EC・営業の、それぞれの担当が「自分は何をすべきか」
 わかるように、担当別の一言を添える
・5分で読める長さに

--- メモ ---
【ここにリサーチ結果を貼り付け】

プロンプト例:毎週のルーティンを仕組みにする

小さなアパレル会社で、毎週月曜の朝に
「今週おさえるべきアパレル企画情報とECの最新情報」を
把握するための、定例リサーチのテンプレートを作ってください。

・毎週同じ形で使える質問リスト(企画情報/EC情報の2本立て)
・所要15分で終わる分量
・最後に「先週から変わった点」を確認する項目を入れる

情報の仕事を、こう“ルーティン化”した

落ち着いた形は、シンプルです。週のはじめにAIへ定例のリサーチを依頼し、出てきた内容を要約させ、社内に共有する。これを毎週繰り返すだけ。一回ごとは15分ほどですが、積み重なると、半歩遅れていた情報が、むしろ半歩先に変わってきました。「企画会議の質が上がった」「EC担当が新しい施策を自分から提案するようになった」と、社長さんにも喜んでいただけました。

ステップ AIにやらせること 効果
集める 企画トレンド・素材・競合・ECの最新情報を検索・整理 少人数でも“調べる係”を持てる
翻訳する 専門用語や新サービスを、自社目線・自社の言葉に落とす 情報が「行動」に変わる
共有する 要約し、担当別の一言を添えて社内へ 部署をまたいで情報が流れる

始めるときの、3つのコツ

1. 検索をオンにして、出典を出させる。企画もECも、鮮度が命です。「いつ時点の、どこの情報か」を必ず答えさせ、大事な点は公式で裏取りする。これだけで情報の信頼度がまるで違います。

2. 「うちならどうか」まで考えさせる。トレンド紹介で止めず、自社の客層・価格帯・規模に当てはめて提案させる。AIを“評論家”ではなく“参謀”として使うイメージです。

3. 集めたら、必ず共有まで回す。情報は流れて初めて力になります。要約をAIに任せ、社内の各担当へ届けるところまでを一つの流れにする。小さな会社ほど、この“最後のひと押し”が効きます。

規模では大手にかないません。でも情報は、仕組みさえ作れば、小さな会社でも互角に戦える領域です。この会社さんも、まず始めたのは「来週の月曜、AIに今週のアパレル企画とECの最新情報を聞いてみる」という、ただそれだけのことでした。次回は、ここで触れた企画情報リサーチを、さらに深掘りしてお届けする予定です。

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By インフォアイ

繊維商社にてインド生産を中心とした業務に12年間従事。現地工場との生産管理や品質管理、繊維ビジネスの実務経験を積む。
その後、2002年にインドと日本を拠点とする株式会社インフォアイを設立。繊維業界向けのクラウドソリューション開発や画像加工サービス「キリコム」を中心に事業を展開している。

現在は、繊維業向けクラウドソリューション「KIRIKOM PLUS」など、繊維業界の業務効率化とデジタル化を目的としたソリューションの開発・提供を行い、日本および海外の企業に向けてサービスを展開している。

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