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インド各地の縫製業者・産地の特徴ガイド

産地ガイド / インド縫製クラスター

インド各地の縫製業者・産地の特徴ガイド

主要8クラスターの専門品目・生産規模・主要取引ブランドを引用源明記で解説
2026年3月13日更新 | TEA・IBEF・Fibre2Fashion・Business Standard 等の公表データをもとに編集

インドの縫製産業は全国に70以上の専門クラスターを持ち、それぞれが異なる品目・素材・生産方式に特化している。国際バイヤーが「インドで縫製を探す」とき、産地によって得意品目・MOQ・品質水準・リードタイムが大きく異なる。本稿では、引用元を明記しながら主要8産地の特徴を整理する。

この記事で紹介する産地
① ティルプール(タミル・ナードゥ州)
② デリーNCR(ハリヤナ州・UP州含む)
③ バンガロール(カルナータカ州)
④ ルディアナ(パンジャブ州)
⑤ スーラト(グジャラート州)
⑥ ジャイプール(ラージャスターン州)
⑦ パーニーパット(ハリヤナ州)
⑧ アーメダバード(グジャラート州)

Tamil Nadu
ティルプール(Tiruppur)
ニットウェア首都

製造ユニット数
約28,000
Business Standard、2024年11月
直接雇用
約80万人
Business Standard、2024年11月
輸出額(FY25)
約4,000億ルピー
($4.71B)TEA、2025年4月
インド綿ニット輸出シェア
約90%
ティルプール輸出業者協会(TEA)

産地の特徴

「インドのニットウェア首都(Knitwear Capital of India)」と呼ばれるティルプールは、綿ニット素材に特化した世界有数の輸出クラスターである。Tシャツ・ポロシャツ・スポーツウェア・アンダーウェアを中心に生産し、紡績から染色・縫製・出荷まで一貫してクラスター内で完結できる垂直統合型のエコシステムを持つ。1985年の輸出額15億ルピーから2024〜25年度には4兆ルピー超と、40年間で約2,667倍に拡大した(年平均成長率22%)。

出典:Fashionating World;TEA(ティルプール輸出業者協会)

ティルプール及びコインバトール地区(50km圏内)を合わせると、2024〜25年度のインド全体のニットウェア輸出額6兆5,178億ルピーのうち69%(4兆4,747億ルピー)を占める。

出典:Business Standard(2026年3月12日)

サステナビリティ・差別化

「グリーン・ティルプール」戦略のもと、クラスター内で1日約1億5000万リットルを使用する水のほぼ100%を再利用するゼロ液体排出(ZLD)を達成。また風力・太陽光など再生可能エネルギーで約1,900MWを自家発電(クラスター需要の約300MWの6倍超)しており、カーボンネガティブ・クラスターとして欧米バイヤーの調達基準に対応している。

出典:Business Standard(2024年11月11日);TEA会長 K.M.スブラマニアン発言

主な取引ブランド(確認済み)

Primark、Tesco、Next、Marks & Spencer、Warner Bros.、Walmart、Tommy Hilfiger、The Gap、Carter’s、Target(Australia)、Woolworths、Decathlon
出典:Business Standard(2026年3月12日);TEA公式サイト;Business Standard(2024年11月11日)

Delhi / Haryana / Uttar Pradesh
デリーNCR(Delhi NCR)
総合ファッションハブ
テキスタイルユニット数
4,000超
小規模手織りから大型工場まで含む(Aadiveer Fab India)
輸出額(FY22-23)
約$35億
インド繊維輸出総額の約15%(Aadiveer Fab India)
雇用
約60万人
デリー市内のテキスタイル関連(Aadiveer Fab India)

産地の特徴

デリーNCR(グルガオン・マネサル・ファリダバード・ノイダ・カンドサを含む広域圏)は、レディース・キッズ・メンズのファッションウェアから制服・デニム・カジュアルウェアまで、多品目を横断する総合ガーメントハブである。小ロット・多品種・短納期への柔軟な対応が強みで、サブコントラクター網を活用した小規模工場群がその機動力を支える。男性労働者の多くはウッタル・プラデーシュ州・ビハール州などの農村出身の季節労働者で、受注量に応じて柔軟に工場へ雇用される構造が特徴的である。

出典:Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」;IIT Delhi ガーメント産業研究論文(Foreign Trade Review、2024年)

サブクラスターの分業

地域 主な専門品目
グルガオン 高付加価値ファッション、ラグジュアリーブランド向け
ノイダ・マネサル レディース・キッズファッションウェア
ファリダバード ホジャリー・インナーウェア・合成繊維素材
ガーズィヤーバード サリー・クルタ・既製品・装飾布地

出典:Lohar Studio「Major Cloth Manufacturing Cities in Delhi NCR」(2025年10月);Fibre2Fashion

主要プレーヤー(確認済み)

Orient Craft、Shahi Exports、Modelama、Richa Garments、SPL、Pearl Global、Matrix、Addi Industries
出典:Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」

Karnataka
バンガロール(Bengaluru)
ウーブン構造縫製
工場数
1,200超
2025年10月時点(marketinghack4u.com)
雇用
50万人超
2025年10月時点(同上)
インド縫製生産シェア
約20%
縫製輸出の約11%(同上)

産地の特徴

バンガロールはトラウザー・ジャケット・スーツなどの構造縫製(ストラクチャード・ガーメント)に強みを持ち、ITハブとしての蓄積を活かした最新テクノロジーの導入が進む。IIT Delhi の研究論文(Foreign Trade Review、2024年)によると、バンガロールの企業はウーブン素材の縫製工程をほぼ自社工場内で完結させており、高ボリューム・短ターンアラウンド・高品質管理を実現している。カルナータカ州農村部からの移住女性労働者が主要な労働力を構成し、安定した雇用関係が維持されている。

出典:IIT Delhi ガーメント産業研究論文(Foreign Trade Review, Vol 27, No 2、2024年);Fibre2Fashion

主な取引ブランド(確認済み)

GAP、Levi’s、Tommy Hilfiger(バンガロール産地からの調達が確認されているブランド)
主要輸出先:米国、EU、中東
出典:Small World India「Manufacturing Hubs in India 2026」;marketinghack4u.com(2025年10月)

代表企業(確認済み)

Gokaldas Exports(メンズスーツ・シャツ・コート・レディーストップス)、LT Karle、Texport Syndicate、K Mohan
出典:Fibre2Fashion;marketinghack4u.com(2025年10月)

Punjab
ルディアナ(Ludhiana)
ウールニット・ホジャリー
ホジャリーユニット
10,000超
Small World India(2026年)
主要品目
セーター・サーマル・靴下・スポーツウェア
得意素材
フラットニット(ウール・綿混)

産地の特徴

ルディアナはフラットニット(フルファッション・ニット)の高付加価値品に特化しており、小量・高単価の注文を得意とするニッチ市場向けクラスターとして機能している。ウール・綿混セーターとTシャツが主力品目で、ほとんどの工場が紡績・編立以外の工程(染色・刺繍など)をサブコントラクターに外注する分業構造をとる。ティルプールとは異なり、垂直統合度は低い。

出典:Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」

主な取引ブランド(確認済み)

SEARS、Target、Esprit、GAP、H&M、Tom Tailor、NEXT
代表輸出企業:Oswal Group、Nahar Group、Vardhman、Greatway、Goyal Knitwears、Mohini Exports、Bhandari Exports
出典:Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」

Gujarat
スーラト(Surat)
合成繊維・生地製造
パワールーム数
約65万台
(prathameshe.co.in)
1日の生地生産量
4,000万m
(prathameshe.co.in)
インド合成繊維生産シェア
約40%
Textileinfomedia;Small World India
雇用
約140万人
Mongabay India(2024年2月)

産地の特徴

スーラトはインドの合成繊維(ポリエステル・ナイロン・ビスコース)生産の中心地であり、縫製よりも生地製造・染色・テキスタイル取引に特化したクラスターである。100以上の繊維市場(テキスタイルマーケット)がリングロード沿いに集積し、サリー・レディースウェア用ファンシー生地・デジタルプリント生地の国内外流通を担う。縫製企業が生地をスーラトで調達し、他産地で縫製するケースが多い。

出典:Fibre2Fashion「Textile Industry of Surat」;Textileinfomedia;Dinesh Exports「Guide to Fabric Sourcing From Different Places in India」(2025年7月)

グジャラート州テキスタイル政策2024・PLIスキーム・国家技術繊維ミッションにより、スーラト拠点の製造業者の近代化・規模拡大を支援する補助金・金利支援・R&D奨励が提供されている。

出典:Fibre2Fashion「The Textile Industry of Surat」

Rajasthan
ジャイプール(Jaipur)
手工芸・ブロックプリント

産地の特徴

ジャイプールはハンドワークと伝統プリントに特化した産地である。手彫りの木版を使ったブロックプリント(Block-printing)、絞り染め(バンダニ:Bandhani)、ラヘリア(斜め縞の絞り染め)が代表的な技法で、いずれも綿・シルク生地に施される。ラジャスタン王族の伝統に由来するバンダニは、黄・緑・赤・黒を中心とした鮮やかな色彩と、点・円・波・縞などの幾何学模様で知られる。

出典:Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」

手工芸品・伝統プリント素材の調達先として、ブティックブランドや国際ファッションリテーラーに人気が高い。サンプリング・製品開発能力の高さもジャイプールの強みとして挙げられており、低MOQかつ高いデザイン性を求めるバイヤーに適した産地とされる。

出典:Fibre2Fashion;Small World India「Manufacturing Hubs in India 2026」(2026年2月);Dinesh Exports「Guide to Fabric Sourcing From Different Places in India」(2025年7月)

主な取引バイヤー属性:ブティックブランド・グローバルファッションリテーラー・民族衣装系ブランド
出典:Small World India;Fibre2Fashion

Haryana
パーニーパット(Panipat)
ホームテキスタイル・再生繊維
パワールーム雇用
1.5万人
パワールームセクターのみ(Textile Value Chain)
主要品目
毛布・ラグ・再生糸・ベッドリネン
再生ウール処理
2,000トン/日
Small World India(2026年)

産地の特徴

「織工の都市」とも呼ばれるパーニーパットは、ベッドリネン・毛布・カーペット・カーテンなどホームテキスタイルの主要輸出産地である。パワールームにはジャカードを組み合わせ、ベッドカバー・カーテン・内装布など多彩なデザインを生産する。主な原材料はアートシルク・ポリエステル・アクリル・ポリプロピレン・再生ウール糸(ショッディー糸)で、ショッディー糸は地域内のショッディー紡績工場から調達される。

出典:Textile Value Chain「Panipat: City of Handlooms & International Home Textiles Hub」;Small World India(2026年)

パーニーパットは世界的な再生繊維(リサイクルテキスタイル)の生産地としても知られ、国際的にはホームテキスタイルの輸出ハブとして定着している。

出典:Small World India「Textile Manufacturing in India 2026」;Textilesphere.com(2024年11月)

Gujarat
アーメダバード(Ahmedabad)
デニム・綿テキスタイル

産地の特徴

「インドのマンチェスター」とも呼ばれるアーメダバードは、デニム生産のインド国内最大の中心地である。グジャラート州はインド国内の綿花生産量の30%超を担い、アーメダバードはその綿花に近接した立地を活かした綿テキスタイル・デニム製造で強みを持つ。インド最大のテキスタイルメーカーの一つであるArvind Limitedのデニム事業もアーメダバードを拠点とする。

出典:Absoluteveritas.com「Exploring the Top 5 States for Textile and Apparel Manufacturing in India」;Small World India;Dinesh Exports(2025年7月)

主要プレーヤー(確認済み):Arvind Limited(デニム・テキスタイル、インド最大の繊維輸出企業)
出典:Seair Exim Solutions(2025年);Dinesh Exports(2025年7月)

産地別 特徴サマリー

産地 主要品目 強み 生産構造
ティルプール 綿ニット・Tシャツ・スポーツウェア 垂直統合・ZLD・大量輸出 約28,000ユニット、クラスター内一貫生産
デリーNCR ファッションウェア・デニム・制服 多品種・小ロット・サンプリング 小規模工場主体、サブコントラクター活用
バンガロール トラウザー・スーツ・構造縫製品 高品質・ITインフラ・大型ブランド対応 大規模工場主体、自社内一貫縫製
ルディアナ ウールセーター・サーマル・ホジャリー フラットニット特化・高付加価値小量 染色・刺繍は外注分業
スーラト 合成繊維生地・サリー・プリント生地 超大量・超高速・デジタルプリント 生地製造・取引特化(縫製は他産地に外注多)
ジャイプール ブロックプリント・刺繍・民族衣装 職人技術・デザイン性・低MOQ 手工芸・MSME主体
パーニーパット 毛布・ラグ・再生繊維・ベッドリネン ホームテキスタイル輸出・再生繊維 パワールーム主体、ジャカード対応
アーメダバード デニム・綿テキスタイル デニム特化・綿花産地に近接 大規模ミル主体(Arvind等)

出典:Fibre2Fashion;IBEF(2026年2月);Small World India「Manufacturing Hubs in India 2026」(2026年2月);Business Standard;TEA;各種公開情報をもとに編集部まとめ

背戸土井

 

主要引用・参照元

  1. Tiruppur Exporters’ Association(TEA)公式サイト:tea-india.org — クラスター概要・輸出統計
  2. Business Standard「Tiruppur picks up the threads」(2026年3月12日)— FY25輸出額・地域シェア
  3. Business Standard「Tiruppur textile industry returns to growth」(2024年11月11日)— 工場数・雇用・ZLD・主要バイヤー
  4. Textile Insights「Tiruppur Knitwear Exports Surge 20%」(2025年4月21日)— FY25輸出20%増
  5. Fashionating World「Tiruppur, India’s knitwear powerhouse」— 輸出額推移・垂直統合モデル
  6. Fibre2Fashion「Glance on Manufacturing Centers of Indian Garment Industry」— デリーNCR・ルディアナ・バンガロール・ジャイプール・ティルプールの各特徴
  7. IIT Delhi ガーメント産業研究論文(Foreign Trade Review, Vol 27, No 2)— バンガロール・デリーNCRの生産構造比較(著者:Chinju Jayan、2024年)
  8. marketinghack4u.com「Top 10 Garment Manufacturers in Bangalore」(2025年10月)— バンガロール工場数・雇用・国内シェア
  9. Small World India「Manufacturing Hubs in India 2026」(2026年2月)— 各産地数値・デニム・ホームテキスタイル
  10. Textile Value Chain「Panipat: City of Handlooms & International Home Textiles Hub」— パーニーパット雇用・原材料
  11. Mongabay India「Stitching sustainability amidst climate change challenges」(2024年2月)— スーラト雇用140万人・サステナビリティ課題
  12. Textileinfomedia「Top Textile Companies in Surat」— スーラト合成繊維40%シェア
  13. prathameshe.co.in「Largest Textile City in India: Surat’s Reign」(2025年6月)— パワールーム数・1日生産量
  14. Absoluteveritas.com「Top 5 States for Textile and Apparel Manufacturing in India」— グジャラート・デニム・綿花生産
  15. Dinesh Exports「Guide to Fabric Sourcing From Different Places in India」(2025年7月)— ジャイプール・スーラト・アーメダバードの素材調達特性
  16. Aadiveer Fab India「Textile Industry in Delhi」(2024年)— デリーNCR輸出額・雇用統計
  17. IBEF「Indian Textiles and Apparel Industry Analysis」(2026年2月更新)— 産業全体統計
  18. Textilesphere.com「Textile Clusters in India」(2024年11月)— 主要クラスター概要
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インドの繊維・衣料品産業 産業ポジションと政府の戦略

産業レポート / インド繊維・衣料品

インドの繊維・衣料品産業
産業ポジションと政府の戦略

世界第2位の生産大国が描く「2030年・輸出1000億ドル」計画
2026年3月13日 | 各種公式発表・政府資料・業界報告をもとにまとめ

Section 01

グローバルポジション:世界第2位の生産大国

インドは繊維・衣料品の世界第2位の生産国・第3位の輸出国であり、グローバル貿易に占めるシェアは4.6%、複数のカテゴリーでトップ5に入る。また、世界最大の綿花生産国(世界の綿花作付面積の約39%)、第2位の絹生産国でもある。
出典:IBEF(インド・ブランド・エクイティ財団)、2026年2月更新

輸出規模(FY25)
$37.8B
ハンディクラフト含む。前年度比増加(繊維省年末レビュー2025)
直接雇用
4,500万人超
農業に次ぐ国内第2位(国家会計統計2025年版;経済調査2026〜27年版)
GDP貢献
約2%
製造業GVAの約11%相当(IBEF、2025年8月時点)
国内市場規模
$2,250億
2025年時点。2030年に$3,500億へ拡大見込み(IBEF)
MSME比率
約80%
生産能力のうちMSMEが占める割合(インド繊維省プレスリリース)

輸出品目別では、2025年度第1四半期(2025年4〜6月)における既製服(RMG)が総輸出額94億ドルの45%を占め最大シェア。次いで綿製品30%、人工繊維製品12%と続く。主要輸出先は米国(全輸出の約29%)とEU(約28%)であり、この2市場でインドの繊維輸出の過半数を占める。
出典:IBEF 2026年2月;インド繊維省PIBプレスリリース

Section 02

これまでの課題:FTA格差と競争上の不均衡

インドは長年、主要市場において他国と比べFTA上の不利を抱えてきた。バングラデシュ・ベトナム・パキスタン・トルコはEUでゼロ〜優遇関税を享受してきた一方、インドは最大12%の最恵国(MFN)関税を課されていた。

「EUへのインド産衣料品・衣類のゼロ関税アクセスにより、欧州市場におけるインドの競争力が決定的に向上する」

— A.サクティヴェル 衣料品輸出振興評議会(AEPC)会長
FashionUnited UK(2026年1月29日)

インドのEU向けアパレル輸出は2024年度の21.1億ドルから2025年度には23.4億ドルへと約11%増加したものの、バングラデシュが年間約300億ドル相当をEUに輸出するのとは対照的な規模にとどまっていた。
出典:Apparel Resources 2026年3月2日;Business Standard、ラジンダー・クマール氏(インド繊維省経済アドバイザー)寄稿 2026年2月1日

インドのEU向け繊維・衣料品輸出シェアはわずか2.9%(2025年)。EUの繊維・衣料品輸入総額は年間約2,028億ドルにのぼる。
出典:FashionUnited(2026年1月27日)

Section 03

インド政府の主要政策パッケージ

インド政府は繊維産業の国際競争力強化と雇用創出を目的に、複数の旗艦政策を展開している。

PLI(生産連動型インセンティブ)繊維スキーム

2021年9月24日告示。人工繊維(MMF)アパレル・生地および技術繊維の生産拡大を目的とした総額1兆683億ルピー(約13億ドル)のインセンティブ制度。対象は5カテゴリーで、生産・輸出実績に応じてインセンティブが支払われる。これまでに85社が申請し、総額2兆ルピー超の投資を提案。申請期限は2026年3月31日まで延長。

出典:インドPLI繊維省公式ポータル(pli.texmin.gov.in);Clothtextiles.in 2026年1月15日

PM MITRA(首相直轄メガ統合繊維・衣料品パーク)

全国7カ所に世界水準の統合繊維パークを整備。総予算4445億ルピー(7年間、2027〜28年度まで)。確定サイトはタミル・ナードゥ州・テランガナ州・グジャラート州・カルナータカ州・マディヤ・プラデーシュ州・ウッタル・プラデーシュ州・マハラシュトラ州の7カ所。締結済み投資MoUの見込み額は2兆7434億ルピー超。全7サイトで環境許可取得済み。2025年9月17日、モディ首相がマディヤ・プラデーシュ州ダール地区のインド最大の統合繊維パークを開所(約30万人の雇用創出を目指す)。

出典:インド繊維省PIBプレスリリース(PRID:2208051);IBEF 2026年2月

国家技術繊維ミッション(NTTM)

研究・市場開発・教育・輸出振興に特化した総額1480億ルピーのミッション。2026年3月31日まで延長。炭素繊維・アラミド繊維など特殊繊維分野で168件のR&Dプロジェクト(総額520億ルピー)が承認済み。IIT・NIT等45機関が学部・大学院レベルの技術繊維課程を整備するための助成(204億ルピー)も実施。

出典:繊維省年末レビュー2025;PIBプレスリリース

サマルト(Samarth)スキリングスキーム

繊維産業の人材育成を目的とした職業訓練制度。2025年7月時点で累計45万7000人以上が訓練を受け、うち35万5000人が就職(就職者の88%が女性)。2025〜26年度予算は495億ルピーで、さらに30万人の訓練を計画。

出典:IBEF 2026年2月;C4Sコース 2026年2月5日

繊維省予算・その他施策

2025〜26年度の繊維省予算は5272億ルピー(前年度比19%増)。「カストゥリ・コットン・バーラト」プログラム(認証・トレーサビリティ・ブランディングの3本柱)の立ち上げ、GSTの合理化(2025年)、繊維品質管理指令(QCO)の2026年8月までの延期なども実施。

出典:インドPIBプレスリリース 2025年;繊維省年末レビュー2025;C4Sコース 2026年2月5日

Section 04

政府が掲げる数値目標

繊維省ギリラジ・シン大臣は2026年3月11日、CII(インド産業連盟)主催の産業交流会で次の目標を明言した。

目標項目 目標値 現状(参考)
繊維・衣料品輸出額 $1,000億
2030〜31年度まで
$37.75B(FY25実績)
繊維産業全体の規模 $3,500億
2030年度まで
$2,250億(2025年、国内市場)
グローバル繊維貿易シェア 14.7%
2030年度まで
4.7%(現状)
GDPへの貢献率 約5%
2030年代末を目途
約2%(現状)
繊維繊維生産量 約2,300万トン 約1,500万トン(現状)

出典:IANS通信(2026年3月11日);The Hans India;newkerala.com;IBEF 2026年2月。繊維省ニーラム・シャミ・ラオ事務次官は同会合で「国家繊維ミッション(National Fibre Mission)の早期実施が必要。インドの繊維繊維生産量は現在の約1500万トンから約2300万トンへ増加させる必要がある」と述べた。

Section 05

新通商協定との連動:EU・米国との相次ぐ合意

繊維省は2026年1月27日のインド・EU FTA交渉妥結を公式に歓迎し、EU向けゼロ関税アクセスが輸出目標達成の重要な柱と位置づけた。
出典:インド繊維省PIBプレスリリース(PRID:2156220);欧州委員会IP/26/184

また、インド・米国の暫定通商協定(枠組み合意)についても繊維省は2026年2月7日、「米国向けの18%相互関税撤廃により、バングラデシュ(20%)・中国(30%)・パキスタン(19%)・ベトナム(20%)より有利な条件となり、大手バイヤーの調達見直しを促すことになる」と述べた。

「米国への輸出は全体の約1/5超を担う可能性があり、2030年輸出目標1000億ドルの実現において決定的な役割を果たす。この合意により追加雇用の創出と米国企業による投資促進が期待される」

— インド繊維省(Fiinews.com 2026年2月8日)

Section 06

Bharat Tex 2026:政策の「ショーケース」

繊維省は2026年7月14〜17日に「Bharat Tex 2026」の開催を予定している。前回のBharat Tex 2025(2025年2月14〜17日)では2.2万平方フィートの会場に5000社超が出展、120カ国以上から12万人超のトレードビジターが訪れた。シン大臣は同イベントを2030年輸出目標に向けた国際ネットワーク構築の場と位置づけている。
出典:インド繊維省PIBプレスリリース;IBEF;IANS 2026年3月11日


まとめ

インドの繊維・衣料品産業は、GDPへの2%貢献・4500万人超の直接雇用という「経済の屋台骨」的な地位を持ちながら、FTA格差という構造的な輸出制約を長年抱えてきた。EU FTAの妥結とPLIスキーム・PM MITRAパークを軸とした国内産業政策の同時進行により、政府が掲げる「2030年輸出1000億ドル」目標に向けた政策環境が整いつつある。ただし、EU FTAは正式発効前であり、原産地規則への対応や批准手続きなど実務的課題が残る点は確認されている。
出典:欧州委員会IP/26/184;Apparel Resources 2026年3月2日

背戸土井

主要引用・参照元

  1. インド政府 国家会計統計2025年版(GDP・製造業GVA貢献率)
  2. インド繊維省 PIBプレスリリース(PRID:2117470、2025年):繊維産業のGDP・雇用統計
  3. インド繊維省 PIBプレスリリース(PRID:2157862):製造業生産への貢献
  4. インド繊維省 PIBプレスリリース(PRID:2156220):輸出目標・米国関税対応
  5. インド繊維省 年末レビュー2025(infashionbusiness.com;PIB PRID:2208051)
  6. IBEF(インド・ブランド・エクイティ財団):Indian Textiles and Apparel Industry Analysis(2026年2月更新)
  7. 経済調査2026〜27年版:繊維産業の雇用シェア
  8. C4Sコース:Strengthening India’s Textile Value Chain(2026年2月5日)
  9. Clothtextiles.in:India’s Textile Industry Investment Boom 2025–26(2026年1月15日)
  10. IANS通信(2026年3月11日):繊維大臣ギリラジ・シン氏、CII産業交流会での発言
  11. The Hans India;newkerala.com(2026年3月11日):同発言を報道
  12. Apparel Resources:India-EU FTA Draft Sets Clearer Origin Rules(2026年3月2日)
  13. Fiinews.com:Export: India-US to boost textile trade(2026年2月8日)
  14. Business Standard:India-EU FTA: A transformational opportunity for India’s textiles — ラジンダー・クマール(繊維省経済アドバイザー)寄稿(2026年2月1日)
  15. FashionUnited UK:How the India-EU FTA will level the playing field(2026年1月29日)
  16. 欧州委員会プレスリリース IP/26/184(2026年1月27日)
  17. PLI繊維スキーム公式ポータル:pli.texmin.gov.in
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インド・EU自由貿易協定締結

インド・EU自由貿易協定締結

ファッション産業を変える「世紀の関税撤廃」

2026年1月27日、インドと欧州連合(EU)はニューデリーで自由貿易協定(FTA)の交渉妥結を正式に発表した。約20年にわたる断続的な交渉の末に結ばれたこの協定は、両首脳が「あらゆる取引の母(mother of all deals)」と表現するほどの規模を誇る。特にファッション・繊維産業にとって、この協定は歴史的な転換点となりうる。

 

協定の概要:2兆7000億ドルの自由貿易圏

インド・EU FTAは、EUの27カ国とインドを結ぶ、両者にとって史上最大の通商協定だ。人口約20億人、合計GDPは世界全体の約25%に相当する約27兆ドルの市場を形成する。

欧州委員会の公式発表(IP/26/184)によれば、EUはインドへの輸出品の約97%の関税を削減・撤廃し、年間最大40億ユーロ(約47億ドル)の関税節減効果が見込まれる。インド側は取引金額ベースで93%の関税を削減・撤廃する。貿易自由化の全体カバー率はインド向けが96.6%、EU向けが99.3%に達する(出典:欧州委員会章別サマリー)。

「私たちは20億人の自由貿易圏を創出した。双方が経済的に利益を得る」 ― 欧州委員会 ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(CNBCより)

 

繊維・アパレル:「関税の壁」がついに崩れる

繊維・アパレル分野はこの協定の最大の恩恵を受けるセクターの一つだ。FashionUnited(2026年1月29日付)の報道によれば、これまでインド製の既製服にはEUで9.6〜12%、綿布で4〜10%、化学繊維で12%、リネンなどのホームテキスタイルで6〜12%の輸入関税が課されていた。協定発効後、これらすべての関税がゼロになる。

インド繊維省経済アドバイザーのラジンダー・クマール氏はBusiness Standard(2026年2月1日付)への寄稿で次のように指摘している:「FTA以前、インドの繊維・アパレル輸出はEUでMFN(最恵国待遇)関税として最大12%が課されていた。一見小さく見えるが、利益率が薄く価格競争が激しいこの産業では不釣り合いな打撃だった。バングラデシュ、ベトナム、パキスタン、トルコなどの競合国がゼロ関税または優遇関税を享受し、EU輸入に占めるシェアを大幅に獲得していた。バングラデシュ単独でEUへ年間約300億ドル相当の衣料品を輸出しており、インドが直面していた競争上の不均衡の大きさを示している。」

 

欧州ブランドのサプライヤー転換:ZARA、IKEAもインドへ

業界団体MKMA(2026年1月29日付)の報告によれば、Zara、IKEA、OVS、JYSK、Carrefour、Lidl、Aldi、C&Aといった欧州大手ファッションブランドやスーパーマーケットチェーンが、FTA締結を受けてインドからの調達を大幅に拡大する見通しだ。同報告では、FTA発効後、インドのアパレル輸出が年率20〜25%増加し、3年以内に倍増する可能性があるとしている(現在の成長率は約3%)。

棉布輸出振興評議会(TEXPROCIL)のヴィジャイ・アガルワル会長は「これらのグローバルブランドはFTAの優遇枠組みのもとでインドから競争力の高い高品質製品を調達することが見込まれる」と述べている(MKMA報告より)。

 

輸出規模の拡大:7億ドルから最大300〜400億ドルへ

インド商工省のファクトシート(2026年1月27日付)によれば、繊維・衣料品分野ではすべての関税品目でゼロ関税が適用され、インドのEU向け輸出はEUの繊維・衣料品輸入市場(約2兆3000億ルピー=2630億ドル)への参入が容易になる。

インド商工相のピューシュ・ゴーヤル氏はCNBC(2026年1月27日付)に対し、「繊維輸出は現在の70億ドルから非常に短期間で300〜400億ドルに成長するポテンシャルがある」と述べた。また同氏は、EUへの繊維輸出は単独で600〜700万人の雇用を生み出しうると語った。

FashionUnited(2026年1月27日付)によれば、EUは年間1250億ドル超の繊維・アパレルを輸入しているが、そのうちインドのシェアはわずか5〜6%にとどまっている。一方、中国は30%のシェアを占めており、インドの成長余地は大きい。

 

サステナビリティへの影響:「関税ゼロ」がエシカルファッションを後押し

EINPresswire(2026年2月5日付)の報告によれば、欧州のファッションスタートアップはこれまで「サステナビリティのジレンマ」を抱えていた:GOTSやOeko-Texといった認証オーガニック素材を使用したいが、インドからの輸入関税が約10〜12%かかるため、コスト増が重くのしかかっていた。FTA発効により、この関税コストが節減される分を素材のグレードアップに充当できるという。

Global Textile Times(2026年1月28日付)は、この協定が「規制協力・税関手続き・長期的な市場アクセスを向上させる」ことで、欧州の小売業者がファストファッション依存から脱却し、より安定した長期的なサプライチェーンを構築しやすくなると分析している。

 

欧州産業への影響:チャンスと競争圧力の両面

Global Textile Times(2026年1月28日付)の分析によれば、欧州のアパレルセクター—とくにミドルマーケットおよびプライベートラベル分野—は、調達コスト低下により利益率改善や価格競争力向上の恩恵を受ける可能性がある。一方で、基本的・価格重視型の欧州製アパレルメーカーは競争圧力の高まりに直面する。

繊維機械・技術輸出については逆のプラス効果も期待される。インドのメーカーがEUの品質基準を満たすために生産設備を近代化する必要が生じるため、欧州製高性能繊維機械の需要急増が見込まれる(Global Textile Times)。インドは現在、EUから年間約26〜30億ドル相当の繊維機械を輸入している(MKMA報告)。

 

今後の課題:原産地規則と批准プロセス

協定の恩恵を受けるには「原産地規則(RoO)」を満たす必要がある。Apparel Resources(2026年3月2日付)によれば、FTA草案のChapter 3では、原則として繊維素材の最大10%重量分は非原産材料が認められるが、一部品目では20〜30%まで引き上げられる。インドのEU向け繊維・アパレル輸出は、2024年度の21億1000万ドルから2025年度には23億4000万ドルへ、前年比約11%増加しており、FTA発効前から成長トレンドが続いている。

なお、協定はまだ発効していない。欧州委員会の法的審査・翻訳作業を経たのち、EU理事会での承認(特定多数決)、欧州議会の同意、インド議会での批准が必要だ。欧州委員会(IP/26/184)は「関税自由化は数年間かけて段階的に実施される」としており、発効は早くとも2027年初頭と見込まれる。

 

まとめ

インド・EU FTAは、ファッション産業のサプライチェーンを構造的に塗り替える可能性を秘めている。インドのアパレル輸出業者にとっては長年の「関税格差」が解消されるだけでなく、欧州ブランドにとってもコスト効率向上やサステナブル調達の新たな道が開かれる。一方で、バングラデシュやベトナムなどの競合産地、そして欧州の基本アパレルメーカーは新たな競争局面に備える必要がある。協定の正式発効と各国議会の批准が完了する時点で、世界のファッション地図は大きく塗り替わることになるだろう。

背戸土井
 

 

 

主要引用・参照元

  • 欧州委員会プレスリリース IP/26/184(2026年1月27日):EU and India conclude landmark Free Trade Agreement
  • 欧州委員会章別サマリー:MEMO: EU-India Free Trade Agreement: Chapter-by-Chapter Summary(trade.ec.europa.eu)
  • インド商工省ファクトシート:Factsheet on India EU trade deal(commerce.gov.in、2026年1月27日)
  • CNBC:India-EU trade deal: What does it do to tariffs and who benefits?(2026年1月27日)
  • Al Jazeera:’Mother of all deals’: How India-EU trade deal creates $27 trillion market(2026年1月28日)
  • Business Standard:India-EU FTA: A transformational opportunity for India’s textiles(2026年2月1日)
  • FashionUnited UK:How the India-EU FTA will level the playing field for the textile and apparel industry(2026年1月29日)
  • FashionUnited:Textile sector set for major gains under new EU-India trade deal(2026年1月27日)
  • Global Textile Times:EU-India FTA: What It Means for European Textile Industry(2026年1月28日)
  • MKMA:India-EU FTA sees European sourcing shift towards Indian apparel and textiles(2026年1月29日)
  • Fibre2Fashion:India textile & apparel industry to gain under India-EU FTA(2026年1月27日)
  • EINPresswire:EU-India FTA Expected to Influence Sustainable Apparel Sourcing for European Brands(2026年2月5日)
  • Apparel Resources:India-EU FTA Draft Sets Clearer Origin Rules to Boost Textile Export Competitiveness(2026年3月2日)
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利は元にあり

弊社顧問・市来輝夫による日々のコラムのご紹介

パナソニック創業者、松下幸之助氏が残した「利は元にあり」という言葉には深い意味があります。これは、利益は仕入れ値に大きく依存するということを意味します。仕入れ値が安ければ安いほど、利益を出しやすくなります。

しかし、利益を追求する過程で、私自身が苦い経験をしたことがあります。カジュアルブームの際、綿混ストレッチパンツを中国で大量生産しようと試みましたが、品質の問題で断念しました。その後、日本の生地を使って加工貿易に成功し、一時は大成功を収めました。しかし、その成功は短命で、相手方の大損により、長期的な取引が断たれる結果となりました。

この経験から、仕入れ先との健全な関係を保つことの重要性を学びました。値段だけを重視すると、最初はうまくいくかもしれませんが、やがては相手に見放され、持続可能なビジネスは築けません。信頼関係を築き、共存共栄を目指すべきです。

また、適正価格を見極めることも重要です。九州の問屋での経験から、常に高めの価格を提示するようになりました。これにより、値切りを試みる客とも公正な取引が可能となります。

「利は元にあり」は、単に安く仕入れることだけを意味しません。それは、仕入れ先を大切にし、企画、生産、販売、集金を含むビジネスの全過程での総合力を鍛えることを教えています。これらの力を合わせて初めて、真の利益を生み出すことができるのです。

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エンジョイ・ワーキング 2

仕事と高校野球を一緒にするなと怒られそうですが、今日も高校野球の話です。

以前にも話題にしましたが、この夏、慶応義塾高校が「エンジョイ・ベースボール」を掲げ、高校野球に新風を吹き込みました。遊び、楽しむ野球の原点に立ち返り、勝ち得た栄冠でした。その楽しむ野球の原点は仕事と同じだと思えるのです。
しかし、楽しむだけで栄冠を勝ち得るのか?という疑問があります。
楽しむという意味が深いのだと思います。どう深いのか?
「より高いレベルを求めて仕事を追求していく。どうしたら良いか、どうやったらレベルを高める事が出来るのかを、自分でとことん考え実行して結果を出していく、その過程を楽しむ」ということではないでしょうか?

私の現役時代に、当時の社長との面接時に、「粗利20%を目標にしてくれ」と言われました。
私は「そんな無茶な事をしたら、売り上げが激減します」と答えます。しかし、社長は一歩も譲らず、「売り上げが減るなら、減っても良い。粗利20%に達しない課長は課長として認めない」と怖い顔をして言い放ちます。

それからの社長は会議の度に粗利20%を話題にします。次第に私は粗利20%を出すにはどうしたら良いのかを課員と共に議論をし始めました。「今の商品企画では話になりません」「今の仕入れ先では無理です」「今の売り先では良い商品を作っても値が通りません」
売り先から、仕入れ先、商品企画を根本から見直すことになりました。
毎日毎夜、粗利20%という高いレベルの目標を達成するには、どうしたら良いかと考える日々が続きます。
数年後、売り先は問屋からアパレルへ、仕入れ先も中国一辺倒からベトナムや韓国、
商品はカジュアル衣料中心に変化し、ついに粗利20%を達成し、売り上げも増えたのです。
より高いレベルに挑戦し、自分達で考えて苦労して勝ち得た経験は、その後の自信に繋がり、「仕事が面白くて仕方が無い」と思えるようになったのです。

無理矢理にでも挑戦させてくれた社長に感謝しました。
「エンジョイ・ワーキング」とはより高いレベルに挑戦し、自分達で考えて、苦労する。その過程を楽しむということだと思うのです。

「ENJOY LIFE!」「ENJOY HOME!」「ENJOY DANCE!」も同じ事ではないでしょうか?
…………素晴らしい人生を掴むために「ENJOY WORKING!」………………

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エンジョイ・ワーキング

酷暑の中での高校野球は熱戦が続きましたが、明日の仙台育英と慶応の決勝戦で決着がつくことになりました。

その決勝の両監督、仙台育英の須江監督と慶応の森林監督が注目を集めています。

「青春って、すごく密なんで」発言で選手の苦労をねぎらい、頑張りを称えた須江監督はスピーチ語録が出るほど、その発言が人気です。

今日は慶応高校野球部のスローガン「エンジョイ・ベースボール」について考えてみたいと思います。

この言葉の意図について森林監督はこう語っています。  「野球を楽しむためにはどうすればいいか。楽しめるようになるには何が必要で、自分たちはどんな努力をすればいいか」と勝利に向かう過程で必要なスローガンだと認めています。

多くの全国の野球部員は丸刈りが多い中で、慶応野球部は長髪、丸刈り個人の自由と言う事で自主性を重んじています。練習メニューも自分達で考えさせるなど、選手の自主性を重んじています。

自分で考えて、目標を立てて、目標を達成できるように頑張ると言うことが大事で、丸刈りか長髪かは関係ないと言うことです。

私のサラリーマン時代を振り返っても、自分で考えて目標を持ったことが、営業不振から抜け出た転機だと思います。

パンツやスカートなどボトムの課で営業をしていた私は営業不振から

カットソーの課に移動を命じられます。ベテラン優秀営業達がいる中で会社をいつ辞めようかと、毎日考えていました。

カットソーの課長は厳しい指導で有名な課長で、私は戦々恐々としていましたが、その課長は企画を自ら考え、仕入れをして、営業に売らせるというスタイルで成功し、自信満々の課長でした。

私はこの自ら考え、企画し、生産、販売する仕組みを利用し、私が経験したボトムを作ったら売れるかもしれないと思い、恐る恐る課長に提案してみたら、意外にも即OKが出て、その企画と販売を担当することになりました。

自分で考え、自分で目標をたてざるおえなくなったのです。

今までは販売不振の原因を課長が悪い、企画が悪い、商品が悪いと人や

商品のせいにして逃げていましたが、自分の責任で考え、企画し、生産、販売まで責任を

持つことになったのです。

私は何が売れ、何が売れないのかを徹底して得意先や仕入れ先から情報を収集し、自ら市場調査もし出しました。当時、カジュアルパンツが売れ出した時代で、その商品の仕入れ先や得意先を開拓し、いつかカジュアルパンツの課を作ることになります。

上司からの指示に反発ばかりし、責任転嫁し放題、仕事が面白くないのは会社のせい、いつ辞めようかと思っていた私は自分で考え、自分で目標を持つことで、自己責任を持つ営業に変身していったのです。

“エンジョイ・ワーキング”

「仕事を楽しむためにどうすればいいか。楽しめるようになるには何が必要で、自分たちはどんな努力をすればいいか。」

慶応野球部監督、森林監督の明日の采配そして選手に注目しています。

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事前準備 ( 1 )

仕事を成果あるものにするには事前準備が欠かせません。

私は若い頃、出来の悪い営業でした。課を転々とし、最後に、鬼課長と言われたカットソーをやっているH課長のもとに配属され、戦々恐々としていた時でした。自信喪失に陥っていた私に
「奈良の吉野にあるカットソーの工場へ研修で行ってこい!」と言われました。

朝から晩までアイロンがけをやったり、下請け周りをしたり、そこでしょっちゅう工場長が言うことは「段取り八分!」「そんな確認見本の返事では段取りが狂う!納期は保証できへん!」
わてらの縫製の仕事は段取り八分なんや!お前のとこの課長は工場がどういうものかわかっとらん!」という風にしょっちゅう「段取り八分」と怒鳴っていました。
段取りが終われば仕事の大半は終わったと言っても、同然ということです。
段取りとは事前準備ということです。段取りなしで仕事は始まらないのです。

営業が上手くいかなかった頃、良く先輩から「根回しが大事だ」と良く言われました。
得意先への根回し、仕入先への根回し、上司への根回し、他にも仕事を上手く進めるためには色々な所への根回しが必要です。
この「根回し」という言葉も、いかに「事前準備」が必要かということで生まれた言葉です。樹木の移植を成功させるには、その樹木の周囲を掘り、主な根以外の大部分の根を切って、切った所から毛根が生えてから、その木を移植すると上手くいくことから「根回し」ということばが生まれました。

昔のプロの職人はいかに事前準備が大事かを知っていましたから、そういう言葉が生まれたのです。
私達の仕事は営業だけでなく、すべての職種に、行き当たりばったりでいく仕事はない、と言い切って良いと思います。

企画の提案をするにも昨年なにが売れたか、売れなかったか、今秋冬の現状はどうか、だから次の夏物はどういう商品に要望が多くなっていくのかを予測出来てなければ、得意先との商談もピントの外れたものになってしまうのではないでしょうか?

お客さんとの商談では相手が何を欲しがっているかを読まなければなりません。
何に、不便を感じているか、当方に何を要望しているのかを話の中から察知し、絞り込んだ中から商談をする。相手が要望していない話を延々とされたら、お客さんはうんざりして、空気の読めない奴だとレッテルを貼られる。次回の商談はなかなか前に進みません。

相手が要望するものを予測していくには周到な準備なしで予測することは難しいと思います。

当時、営業の鏡と言われたY氏は読みのすごい人だったと、T元相談役に良く聞かされました。
お客さんが「欲しい商品が分からない」というと、「これとこれが貴方の欲しい商品のはずだ」と、お客さんは「なるほど!」と言って買っていき、その商品が良く売れる。そのお客さんは当然、Y氏のファンになり、次回からの商談は格段にスムーズになります。

何故そんなことになるのか、それはY氏が世間で売れている商品、これから売れるだろう商品、こういう売り場では売れるが、こういう値段では売れないと、必死で研究していたからだと思うのです。そのうえで、お客さんの販売ルートを考えて、適切なアドバイスをしていたのです。だから相手が欲しい商品を相手よりも良く分かるという信じられないことが起きるのです。事前の充分な準備により、お客さんよりお客さんのことが分かったのです。

なにげない発言で相手の逆鱗に触れる場合があります。

例えば、“商品のコピーは犯罪です”と新聞に公告まで掲載する会社とは知らず、「お宅の商品はすごい、買ってコピーしたら、他で良く売れます。」とお世辞のつもりで能天気なことを言ってしまったらどうでしょう?多分、その発言だけで取引停止なると思います。

相手がどういう会社かを良く知り、相手が魅力的だと感じる情報を伝え、欲しがるだろう商品を勧め、興味をそそる企画の提案をする。それが基本だと思います。

一生懸命相手のことを考えて、事前準備もし、絞り込んだ中から商談をしたが、上手くいかなかったら、その商談は早々に引きあげて、次につながる話題の提供、要望を聞いてくる。次につながる準備に取り掛かるのです。絞り込む勇気、知恵が企画に販売に生きてくるのであって、当方の企画商品を説明するだけならば御用聞きよりも劣ります。

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コラム 雑感

聞き上手

先日、あるイベントで、ある有名な会社の会長と会う機会があり、お話をさせていただきました。

非常に気さくな方で、つい私は多弁になってしまいました。話が終わると非常に良い気持ちになりました。後日、良く会長を知っておられる方々に会長の評判を聞くと、異口同音に高評価です。それで、その原因を皆で話し合いした結論は「聞き上手」だという事でした。「聞き上手」が実に大事だと気づかされた瞬間でした。

商談というと商品の説明をしなければならいし、なぜ売れるかを説明する必要があるので、とにかく喋らなければならないと思うのが普通かもしれません。しかし、私は喋ることよりも、聞くことのほうが重要ではないかと思います。先ずは、相手が何を要望しているのかを聞き出すことが必要だと思うのです。そのためには聞き上手になることが大事です。聞き上手になって相手の要望が分かればその商品に絞って話をすれば良い。それではどうしたら聞き上手になれるのでしょう?
人から嫌われたいと思えば、下記のことをやれば確実に嫌われると思います

1) 相手の話を決して長く聞かない
2) 終始自分の事だけを喋る
3) 何か言いたいことがあると相手の話の途中で遠慮なく口をはさむ。

自我に陶酔し、自分だけが偉いと思っている人たちです。皆さんもそういうたぐいの人に会ったことがあるはずです。
聞き上手になるためには、その反対のことをやれば良いわけです。

1) 相手の話を興味深くじっくり聞く
2) 相手にしゃべらせ、自分の話は控えめにする
3) タイミング良く相槌を打ち、相手がリズムよく喋りやすいようにする。

そうすると相手は気持ちよく喋ることができ、思わぬ本音が聞けて商談もスムーズにいくものです。そしてあなたに対して好感を持ち、相手にとって貴方はとっても良い人になるでしょう。
「江戸しぐさ」という言葉をご存じでしょうか?
良いコミュニケーションの為の江戸商人の知恵だそうです。
「江戸しぐさ」で言う聞き上手とは

人前で足を組まない。腕組みをしない。
相手の目をじっと見て体を乗り出すようにして聴く。
勘所では相槌を打つ。
多少知っている話でも「知っている」などとは言わない。
興味深そうに、先に話しを進めるよう促せば
思わぬ収穫があるは必定。

と書いてありました。江戸の知恵は流石でしょう?
聞き上手の基本的なテクニックは、相手へのアクション(主に質問)と、相手の話に対するリアクション(相づち/表情/動作など)でしょう。 相手が話し出さない場合には、こちらから相手に質問をすればいいのです。  相手が話し出したら、それに対して相手の言葉に合わせてリアクションをとればいいのです。相槌と、それに合った表情や動作をすればいいのです。 相槌には、次のようなものがあります。

・肯定的 :「そう」「フムフム」「ふーん」「ハイハイ」「なるほど」「そうなんだ」・・・。
・先を聞く:「それで?」「それから?」「どうしたの?」「どういうこと?」・・・。・深く聞く:「どうして?」「どうなっているの?」「(あなたは)どう思うの?」・・・。
・賛同  :「そうだよね」「いいんじゃない」「私もそう思う」・・・。
・驚き  :「へー」「本当ー」「ウソー」「信じられない」「そんなこともあるんだ」・・・。
・ほめる :「すごいね」「たいしたものだ」「やるじゃん」「えらい」
・祝福  :「よかったね」「おめでとう」「幸せだね」・・・。

私もつい多弁になり、反省することばかりですが、人から好かれるコツは話し上手というよりも聞き上手になることだと思います。
皆さんも経験がおありだと思いますが、いつもじっくり話を聞いてくれる人に対しては好感を持ち、貴方にとってなくてはならない人であるはずです。
大概は自分が喋って気持ち良い人が大半ですから、聞き上手になるためには努力するしかありません。お互い、頑張りましょう!

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業務改善(風紀)

弊社顧問・市来輝夫による日々のコラムのご紹介

※ 文中の「当社」は弊社顧問のかっての勤務先

上海出張の際に中国の日系検品会社所長(当社OB)から「御社の社員の挨拶ができてない、目があっても挨拶しない人がいる」といわれました。この日系検品会社の中国人社員はお客さんに対して気持ちの良い挨拶をするように徹底しているので、「御社の挨拶をみるとかなり違和感を覚える」と言われました。どんな立場のかたであろうと、お客からみれば全て当社の社員である。得意先であろうが、仕入れ先であろうが、大事なお客さんであり、感謝の気持ちを挨拶で表現し、気持ちよく商談をしてもらう配慮が大事だと思う。

さわやかな挨拶だと思えるほどの挨拶ができている会社に行くと、しっかりした会社だという印象を持つし、教育がされているという印象を与える。

当社の業績が向上すればするほど、挨拶、マナーをおろそかにすると生意気だと反発を受ける。

特に小売りをやられているお客さんは消費者に対して誠心誠意対応することを社員教育されておられるので、挨拶もろくにできない営業には違和感を感じるのではないかと思います。

挨拶やマナーができていることは洗練された社会人としても当然のことです。

これまでにも何度も言い尽くされたテーマではありますが、忘れがちで風化しやすいテーマです。かなり以前に中国で当社の社員が中国公安当局に拘束された事件がありました。海外出張が常態となった今日、再発はありえないといえるでしょうか?

当社の社員はどこで、誰と会っても挨拶、マナーが立派で気持ちが良い、業績も良いし、人材教育も素晴らしいと言われるよう努力したいものです。

朝の挨拶は元気よく、きちんとできているか→できてないと注意したら、「やっています」という。私から見るとそれは挨拶ではない。あさってを向いてつぶやいているだけ。相手の目を見て大きい声ではっきりと挨拶しましょう! 

お客様に対して笑顔で丁寧に応対しているか、横柄な態度、礼を失する態度で接していないか、→お客さんから「お宅の営業がガムを噛んで商談しようとしている、御社はどういう教育をしているか説明してくれ」と怒られ東京へ飛んで行ったことがあります。本人に問いただすと、ラーメンを食べた後で商談で臭うと失礼だから待ち時間にガムを噛んでいたということでした。よほどガム噛みが横柄に見えたのでしょう。

取次は速やかに、かつきちんとできているか→上海からの帰り、搭乗前に会社へ電話したがちょっと待ってくださいと言ったきり。うんともすんとも返事がなく、結局、カードの残量がなくなり、無茶苦茶腹が立ち、帰国してこんな失礼なことをお客にしてないかを注意しました。

私は社会人として相応しい礼儀正しい精神土壌があってこそ、正しい仕事への姿勢が生まれるのであって、人に対して真摯でない人が仕事だけに真摯になれるはずがないと思います。

どんな職場でも、職域でも優れたコミュニケーションは必要であり、それがあってこそ組織のパワーが発揮できるものと思います。

そのコミュニケーションの基本は挨拶であり、マナーであります。

この業務改善は日々の職場生活の中でお互い注意しあうことが大切で、率先して風紀の改善に努力してほしいと思います。

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クレーム対応の仕方

商売をしているからには必ずと言ってよい程、クレームはあります。
針が出た、品質不良、納期遅れ、返事が遅い、態度が悪いと、いくらでも製品OEMの仕事はクレームの可能性はあります。ですから、クレームが起きないように緻密な仕事ぶりが求められますが、クレームが起きたら仕方ありません。
最少の被害に抑えることと、「雨降って地固まる」と言われるように、クレームを乗り越えて、より信頼関係が強固になることを目指すべきです。

以前、T社にいた時に、W社の店頭から色落ちのクレームがありました。お客さんが酷く怒っておられるのでお客さんの所に一緒に行ってほしいとのことでした。W社の部長は私に「一切言い訳をしないでほしい、ただ頭だけ下げてほしい」と何度も言われました。

その商品は色落ちカラージーンズで色が落ちると表示がしてあるので、私としては納得できない気持ちでしたが、大事な得意先の依頼なので担当者についていきました。
店頭の近くの待ち合わせ場所の喫茶店に行くと、厚かましそうな大阪のおばちゃんの典型のような方がいらっしゃいました。その方は「大好きだった御爺ちゃんが買ってくれたトートバッグにパンツの色が移染した。今はもう亡くなった御爺ちゃんの形見として娘が大事に使っていたのにどうしてくれるんだ」「売り場の人にクレームを言っても返事が遅い、態度が悪い」と興奮気味に怒っています。W社の担当者は平身低頭で謝っています。
その内、お客さんの怒りは鎮まったところで「本当に申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました。これはほんのお詫びのしるしです。」と言って、W社のトートバックとブラウスを差出したら「こんなのが欲しくて言っているんじゃない、返事が遅いし、対応が悪いから文句を言っているんだ」と言います。「分かります。こんなもので許してもらえないでしょうが、どうかお使いいただくと嬉しいです」とW社の担当者が頭を下げて言うと、おばちゃんはにっこり笑って「こんなかわいい商品を貰って悪いわね、私は娘が大好きなブランドだから頑張ってほしいのよ。頼むわね」と言い、娘の自慢話を散々した後で喫茶店を上機嫌で出ていきました。
一種のクレーマーかと思いましたが、小売りは大変だなあとつくづく思いました。

この件でわかるのはクレームの初期動作を迅速にすること誠意を持って丁寧にクレームを聴くことが大事だということです。

本当は、店頭の対応だけで終わったかもしれないのに、迅速な対応ができなっただけに、責任者を出せということになり、W社の部長とメーカーの課長が出て行って消費者に直接謝罪することになった。それと事実関係を早急に調査することです。私の経験でも針が出た事件では消費者の勘違い、得意先の勘違いも多かったように思います。

部長の対応は下記のとおりです。

1) 相手の心情を理解して丁寧にクレームを良く聴く
2) 何が問題になっているか事実関係を確認する
3) 商品の代替え案で問題の解決策を提示する
4) メーカーともどもクレームへのお詫びと感謝をする

クレームが発生したら先ずは謝罪する。相手の話をしっかり話が終わるまで聞いた後に、当社の事情説明をすることが大事です。

クレームの発生は不幸なことですが、クレームの対応に誠心誠意取り組むことで、クレーム発生以前よりも強固な信頼関係になり取引が増えることがあります。
クレームがあったら避けるのではなく、貴方を鍛えるチャンスだと思い、その問題を真正面から捉え、最善の努力をすべきだと思います。

得意先が無理難題を言っている場合は、何故、無理を言うのかを考えなければなりません。上司から「値引きを取れ」と言われている場合は、いくらこちらに理があっても0回答では話が拗れるので、落としどころを探す必要があります。
しかし、得意先の担当者が利益を出すための一方的な無理難題には毅然とした態度で臨むべきだと思います。

既に倒産した会社ですが、私は1か月の納期遅れで契約額の3倍のクレームを突き付けられ、私の対応の拙さから、得意先の社長は直接名誉会長に面会を求め、T社の名誉会長に、そのクレームを全部受けていただいた苦い経験があります。
法外なクレームを受けてしまったわけですが、社会通念を大幅に超えた対応はすべきではありません。法外なクレームは取引停止を意味します。多くの得意先は取引継続を希望するので、それほどのクレームは発生しないことが多いと思います。このクレーム後、1年ほどで倒産した社長は資金繰りに困り、納期遅れに乗じ「窮鼠猫を噛む」の心境で名誉会長に噛みついたのです。

物を作ったり売ったりする仕事とは非常にリスクの高い仕事なのです。そして財務内容の悪い会社に販売することが極めて高いリスクを負っているのだということを思い知らされました。

もう一つクレームで大事なことは社内での報告、連絡、相談(ホウレンソウ)です。特に悪い話は迅速にホウレンソウがなされなければなりません。
ナポレオンが「良い話は翌朝で良いが、悪い話は私をたたき起こせ」と言ったそうです。耳障りの悪い話は上司にしにくいものですが、上司は悪い話しこそ、一刻も早く聞きたいと思っているはずです。