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お知らせ コラム 雑感

エンジョイ・ワーキング 2

仕事と高校野球を一緒にするなと怒られそうですが、今日も高校野球の話です。

以前にも話題にしましたが、この夏、慶応義塾高校が「エンジョイ・ベースボール」を掲げ、高校野球に新風を吹き込みました。遊び、楽しむ野球の原点に立ち返り、勝ち得た栄冠でした。その楽しむ野球の原点は仕事と同じだと思えるのです。
しかし、楽しむだけで栄冠を勝ち得るのか?という疑問があります。
楽しむという意味が深いのだと思います。どう深いのか?
「より高いレベルを求めて仕事を追求していく。どうしたら良いか、どうやったらレベルを高める事が出来るのかを、自分でとことん考え実行して結果を出していく、その過程を楽しむ」ということではないでしょうか?

私の現役時代に、当時の社長との面接時に、「粗利20%を目標にしてくれ」と言われました。
私は「そんな無茶な事をしたら、売り上げが激減します」と答えます。しかし、社長は一歩も譲らず、「売り上げが減るなら、減っても良い。粗利20%に達しない課長は課長として認めない」と怖い顔をして言い放ちます。

それからの社長は会議の度に粗利20%を話題にします。次第に私は粗利20%を出すにはどうしたら良いのかを課員と共に議論をし始めました。「今の商品企画では話になりません」「今の仕入れ先では無理です」「今の売り先では良い商品を作っても値が通りません」
売り先から、仕入れ先、商品企画を根本から見直すことになりました。
毎日毎夜、粗利20%という高いレベルの目標を達成するには、どうしたら良いかと考える日々が続きます。
数年後、売り先は問屋からアパレルへ、仕入れ先も中国一辺倒からベトナムや韓国、
商品はカジュアル衣料中心に変化し、ついに粗利20%を達成し、売り上げも増えたのです。
より高いレベルに挑戦し、自分達で考えて苦労して勝ち得た経験は、その後の自信に繋がり、「仕事が面白くて仕方が無い」と思えるようになったのです。

無理矢理にでも挑戦させてくれた社長に感謝しました。
「エンジョイ・ワーキング」とはより高いレベルに挑戦し、自分達で考えて、苦労する。その過程を楽しむということだと思うのです。

「ENJOY LIFE!」「ENJOY HOME!」「ENJOY DANCE!」も同じ事ではないでしょうか?
…………素晴らしい人生を掴むために「ENJOY WORKING!」………………

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エンジョイ・ワーキング

酷暑の中での高校野球は熱戦が続きましたが、明日の仙台育英と慶応の決勝戦で決着がつくことになりました。

その決勝の両監督、仙台育英の須江監督と慶応の森林監督が注目を集めています。

「青春って、すごく密なんで」発言で選手の苦労をねぎらい、頑張りを称えた須江監督はスピーチ語録が出るほど、その発言が人気です。

今日は慶応高校野球部のスローガン「エンジョイ・ベースボール」について考えてみたいと思います。

この言葉の意図について森林監督はこう語っています。  「野球を楽しむためにはどうすればいいか。楽しめるようになるには何が必要で、自分たちはどんな努力をすればいいか」と勝利に向かう過程で必要なスローガンだと認めています。

多くの全国の野球部員は丸刈りが多い中で、慶応野球部は長髪、丸刈り個人の自由と言う事で自主性を重んじています。練習メニューも自分達で考えさせるなど、選手の自主性を重んじています。

自分で考えて、目標を立てて、目標を達成できるように頑張ると言うことが大事で、丸刈りか長髪かは関係ないと言うことです。

私のサラリーマン時代を振り返っても、自分で考えて目標を持ったことが、営業不振から抜け出た転機だと思います。

パンツやスカートなどボトムの課で営業をしていた私は営業不振から

カットソーの課に移動を命じられます。ベテラン優秀営業達がいる中で会社をいつ辞めようかと、毎日考えていました。

カットソーの課長は厳しい指導で有名な課長で、私は戦々恐々としていましたが、その課長は企画を自ら考え、仕入れをして、営業に売らせるというスタイルで成功し、自信満々の課長でした。

私はこの自ら考え、企画し、生産、販売する仕組みを利用し、私が経験したボトムを作ったら売れるかもしれないと思い、恐る恐る課長に提案してみたら、意外にも即OKが出て、その企画と販売を担当することになりました。

自分で考え、自分で目標をたてざるおえなくなったのです。

今までは販売不振の原因を課長が悪い、企画が悪い、商品が悪いと人や

商品のせいにして逃げていましたが、自分の責任で考え、企画し、生産、販売まで責任を

持つことになったのです。

私は何が売れ、何が売れないのかを徹底して得意先や仕入れ先から情報を収集し、自ら市場調査もし出しました。当時、カジュアルパンツが売れ出した時代で、その商品の仕入れ先や得意先を開拓し、いつかカジュアルパンツの課を作ることになります。

上司からの指示に反発ばかりし、責任転嫁し放題、仕事が面白くないのは会社のせい、いつ辞めようかと思っていた私は自分で考え、自分で目標を持つことで、自己責任を持つ営業に変身していったのです。

“エンジョイ・ワーキング”

「仕事を楽しむためにどうすればいいか。楽しめるようになるには何が必要で、自分たちはどんな努力をすればいいか。」

慶応野球部監督、森林監督の明日の采配そして選手に注目しています。

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事前準備 ( 1 )

仕事を成果あるものにするには事前準備が欠かせません。

私は若い頃、出来の悪い営業でした。課を転々とし、最後に、鬼課長と言われたカットソーをやっているH課長のもとに配属され、戦々恐々としていた時でした。自信喪失に陥っていた私に
「奈良の吉野にあるカットソーの工場へ研修で行ってこい!」と言われました。

朝から晩までアイロンがけをやったり、下請け周りをしたり、そこでしょっちゅう工場長が言うことは「段取り八分!」「そんな確認見本の返事では段取りが狂う!納期は保証できへん!」
わてらの縫製の仕事は段取り八分なんや!お前のとこの課長は工場がどういうものかわかっとらん!」という風にしょっちゅう「段取り八分」と怒鳴っていました。
段取りが終われば仕事の大半は終わったと言っても、同然ということです。
段取りとは事前準備ということです。段取りなしで仕事は始まらないのです。

営業が上手くいかなかった頃、良く先輩から「根回しが大事だ」と良く言われました。
得意先への根回し、仕入先への根回し、上司への根回し、他にも仕事を上手く進めるためには色々な所への根回しが必要です。
この「根回し」という言葉も、いかに「事前準備」が必要かということで生まれた言葉です。樹木の移植を成功させるには、その樹木の周囲を掘り、主な根以外の大部分の根を切って、切った所から毛根が生えてから、その木を移植すると上手くいくことから「根回し」ということばが生まれました。

昔のプロの職人はいかに事前準備が大事かを知っていましたから、そういう言葉が生まれたのです。
私達の仕事は営業だけでなく、すべての職種に、行き当たりばったりでいく仕事はない、と言い切って良いと思います。

企画の提案をするにも昨年なにが売れたか、売れなかったか、今秋冬の現状はどうか、だから次の夏物はどういう商品に要望が多くなっていくのかを予測出来てなければ、得意先との商談もピントの外れたものになってしまうのではないでしょうか?

お客さんとの商談では相手が何を欲しがっているかを読まなければなりません。
何に、不便を感じているか、当方に何を要望しているのかを話の中から察知し、絞り込んだ中から商談をする。相手が要望していない話を延々とされたら、お客さんはうんざりして、空気の読めない奴だとレッテルを貼られる。次回の商談はなかなか前に進みません。

相手が要望するものを予測していくには周到な準備なしで予測することは難しいと思います。

当時、営業の鏡と言われたY氏は読みのすごい人だったと、T元相談役に良く聞かされました。
お客さんが「欲しい商品が分からない」というと、「これとこれが貴方の欲しい商品のはずだ」と、お客さんは「なるほど!」と言って買っていき、その商品が良く売れる。そのお客さんは当然、Y氏のファンになり、次回からの商談は格段にスムーズになります。

何故そんなことになるのか、それはY氏が世間で売れている商品、これから売れるだろう商品、こういう売り場では売れるが、こういう値段では売れないと、必死で研究していたからだと思うのです。そのうえで、お客さんの販売ルートを考えて、適切なアドバイスをしていたのです。だから相手が欲しい商品を相手よりも良く分かるという信じられないことが起きるのです。事前の充分な準備により、お客さんよりお客さんのことが分かったのです。

なにげない発言で相手の逆鱗に触れる場合があります。

例えば、“商品のコピーは犯罪です”と新聞に公告まで掲載する会社とは知らず、「お宅の商品はすごい、買ってコピーしたら、他で良く売れます。」とお世辞のつもりで能天気なことを言ってしまったらどうでしょう?多分、その発言だけで取引停止なると思います。

相手がどういう会社かを良く知り、相手が魅力的だと感じる情報を伝え、欲しがるだろう商品を勧め、興味をそそる企画の提案をする。それが基本だと思います。

一生懸命相手のことを考えて、事前準備もし、絞り込んだ中から商談をしたが、上手くいかなかったら、その商談は早々に引きあげて、次につながる話題の提供、要望を聞いてくる。次につながる準備に取り掛かるのです。絞り込む勇気、知恵が企画に販売に生きてくるのであって、当方の企画商品を説明するだけならば御用聞きよりも劣ります。

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聞き上手

先日、あるイベントで、ある有名な会社の会長と会う機会があり、お話をさせていただきました。

非常に気さくな方で、つい私は多弁になってしまいました。話が終わると非常に良い気持ちになりました。後日、良く会長を知っておられる方々に会長の評判を聞くと、異口同音に高評価です。それで、その原因を皆で話し合いした結論は「聞き上手」だという事でした。「聞き上手」が実に大事だと気づかされた瞬間でした。

商談というと商品の説明をしなければならいし、なぜ売れるかを説明する必要があるので、とにかく喋らなければならないと思うのが普通かもしれません。しかし、私は喋ることよりも、聞くことのほうが重要ではないかと思います。先ずは、相手が何を要望しているのかを聞き出すことが必要だと思うのです。そのためには聞き上手になることが大事です。聞き上手になって相手の要望が分かればその商品に絞って話をすれば良い。それではどうしたら聞き上手になれるのでしょう?
人から嫌われたいと思えば、下記のことをやれば確実に嫌われると思います

1) 相手の話を決して長く聞かない
2) 終始自分の事だけを喋る
3) 何か言いたいことがあると相手の話の途中で遠慮なく口をはさむ。

自我に陶酔し、自分だけが偉いと思っている人たちです。皆さんもそういうたぐいの人に会ったことがあるはずです。
聞き上手になるためには、その反対のことをやれば良いわけです。

1) 相手の話を興味深くじっくり聞く
2) 相手にしゃべらせ、自分の話は控えめにする
3) タイミング良く相槌を打ち、相手がリズムよく喋りやすいようにする。

そうすると相手は気持ちよく喋ることができ、思わぬ本音が聞けて商談もスムーズにいくものです。そしてあなたに対して好感を持ち、相手にとって貴方はとっても良い人になるでしょう。
「江戸しぐさ」という言葉をご存じでしょうか?
良いコミュニケーションの為の江戸商人の知恵だそうです。
「江戸しぐさ」で言う聞き上手とは

人前で足を組まない。腕組みをしない。
相手の目をじっと見て体を乗り出すようにして聴く。
勘所では相槌を打つ。
多少知っている話でも「知っている」などとは言わない。
興味深そうに、先に話しを進めるよう促せば
思わぬ収穫があるは必定。

と書いてありました。江戸の知恵は流石でしょう?
聞き上手の基本的なテクニックは、相手へのアクション(主に質問)と、相手の話に対するリアクション(相づち/表情/動作など)でしょう。 相手が話し出さない場合には、こちらから相手に質問をすればいいのです。  相手が話し出したら、それに対して相手の言葉に合わせてリアクションをとればいいのです。相槌と、それに合った表情や動作をすればいいのです。 相槌には、次のようなものがあります。

・肯定的 :「そう」「フムフム」「ふーん」「ハイハイ」「なるほど」「そうなんだ」・・・。
・先を聞く:「それで?」「それから?」「どうしたの?」「どういうこと?」・・・。・深く聞く:「どうして?」「どうなっているの?」「(あなたは)どう思うの?」・・・。
・賛同  :「そうだよね」「いいんじゃない」「私もそう思う」・・・。
・驚き  :「へー」「本当ー」「ウソー」「信じられない」「そんなこともあるんだ」・・・。
・ほめる :「すごいね」「たいしたものだ」「やるじゃん」「えらい」
・祝福  :「よかったね」「おめでとう」「幸せだね」・・・。

私もつい多弁になり、反省することばかりですが、人から好かれるコツは話し上手というよりも聞き上手になることだと思います。
皆さんも経験がおありだと思いますが、いつもじっくり話を聞いてくれる人に対しては好感を持ち、貴方にとってなくてはならない人であるはずです。
大概は自分が喋って気持ち良い人が大半ですから、聞き上手になるためには努力するしかありません。お互い、頑張りましょう!

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業務改善(風紀)

弊社顧問・市来輝夫による日々のコラムのご紹介

※ 文中の「当社」は弊社顧問のかっての勤務先

上海出張の際に中国の日系検品会社所長(当社OB)から「御社の社員の挨拶ができてない、目があっても挨拶しない人がいる」といわれました。この日系検品会社の中国人社員はお客さんに対して気持ちの良い挨拶をするように徹底しているので、「御社の挨拶をみるとかなり違和感を覚える」と言われました。どんな立場のかたであろうと、お客からみれば全て当社の社員である。得意先であろうが、仕入れ先であろうが、大事なお客さんであり、感謝の気持ちを挨拶で表現し、気持ちよく商談をしてもらう配慮が大事だと思う。

さわやかな挨拶だと思えるほどの挨拶ができている会社に行くと、しっかりした会社だという印象を持つし、教育がされているという印象を与える。

当社の業績が向上すればするほど、挨拶、マナーをおろそかにすると生意気だと反発を受ける。

特に小売りをやられているお客さんは消費者に対して誠心誠意対応することを社員教育されておられるので、挨拶もろくにできない営業には違和感を感じるのではないかと思います。

挨拶やマナーができていることは洗練された社会人としても当然のことです。

これまでにも何度も言い尽くされたテーマではありますが、忘れがちで風化しやすいテーマです。かなり以前に中国で当社の社員が中国公安当局に拘束された事件がありました。海外出張が常態となった今日、再発はありえないといえるでしょうか?

当社の社員はどこで、誰と会っても挨拶、マナーが立派で気持ちが良い、業績も良いし、人材教育も素晴らしいと言われるよう努力したいものです。

朝の挨拶は元気よく、きちんとできているか→できてないと注意したら、「やっています」という。私から見るとそれは挨拶ではない。あさってを向いてつぶやいているだけ。相手の目を見て大きい声ではっきりと挨拶しましょう! 

お客様に対して笑顔で丁寧に応対しているか、横柄な態度、礼を失する態度で接していないか、→お客さんから「お宅の営業がガムを噛んで商談しようとしている、御社はどういう教育をしているか説明してくれ」と怒られ東京へ飛んで行ったことがあります。本人に問いただすと、ラーメンを食べた後で商談で臭うと失礼だから待ち時間にガムを噛んでいたということでした。よほどガム噛みが横柄に見えたのでしょう。

取次は速やかに、かつきちんとできているか→上海からの帰り、搭乗前に会社へ電話したがちょっと待ってくださいと言ったきり。うんともすんとも返事がなく、結局、カードの残量がなくなり、無茶苦茶腹が立ち、帰国してこんな失礼なことをお客にしてないかを注意しました。

私は社会人として相応しい礼儀正しい精神土壌があってこそ、正しい仕事への姿勢が生まれるのであって、人に対して真摯でない人が仕事だけに真摯になれるはずがないと思います。

どんな職場でも、職域でも優れたコミュニケーションは必要であり、それがあってこそ組織のパワーが発揮できるものと思います。

そのコミュニケーションの基本は挨拶であり、マナーであります。

この業務改善は日々の職場生活の中でお互い注意しあうことが大切で、率先して風紀の改善に努力してほしいと思います。

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クレーム対応の仕方

商売をしているからには必ずと言ってよい程、クレームはあります。
針が出た、品質不良、納期遅れ、返事が遅い、態度が悪いと、いくらでも製品OEMの仕事はクレームの可能性はあります。ですから、クレームが起きないように緻密な仕事ぶりが求められますが、クレームが起きたら仕方ありません。
最少の被害に抑えることと、「雨降って地固まる」と言われるように、クレームを乗り越えて、より信頼関係が強固になることを目指すべきです。

以前、T社にいた時に、W社の店頭から色落ちのクレームがありました。お客さんが酷く怒っておられるのでお客さんの所に一緒に行ってほしいとのことでした。W社の部長は私に「一切言い訳をしないでほしい、ただ頭だけ下げてほしい」と何度も言われました。

その商品は色落ちカラージーンズで色が落ちると表示がしてあるので、私としては納得できない気持ちでしたが、大事な得意先の依頼なので担当者についていきました。
店頭の近くの待ち合わせ場所の喫茶店に行くと、厚かましそうな大阪のおばちゃんの典型のような方がいらっしゃいました。その方は「大好きだった御爺ちゃんが買ってくれたトートバッグにパンツの色が移染した。今はもう亡くなった御爺ちゃんの形見として娘が大事に使っていたのにどうしてくれるんだ」「売り場の人にクレームを言っても返事が遅い、態度が悪い」と興奮気味に怒っています。W社の担当者は平身低頭で謝っています。
その内、お客さんの怒りは鎮まったところで「本当に申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました。これはほんのお詫びのしるしです。」と言って、W社のトートバックとブラウスを差出したら「こんなのが欲しくて言っているんじゃない、返事が遅いし、対応が悪いから文句を言っているんだ」と言います。「分かります。こんなもので許してもらえないでしょうが、どうかお使いいただくと嬉しいです」とW社の担当者が頭を下げて言うと、おばちゃんはにっこり笑って「こんなかわいい商品を貰って悪いわね、私は娘が大好きなブランドだから頑張ってほしいのよ。頼むわね」と言い、娘の自慢話を散々した後で喫茶店を上機嫌で出ていきました。
一種のクレーマーかと思いましたが、小売りは大変だなあとつくづく思いました。

この件でわかるのはクレームの初期動作を迅速にすること誠意を持って丁寧にクレームを聴くことが大事だということです。

本当は、店頭の対応だけで終わったかもしれないのに、迅速な対応ができなっただけに、責任者を出せということになり、W社の部長とメーカーの課長が出て行って消費者に直接謝罪することになった。それと事実関係を早急に調査することです。私の経験でも針が出た事件では消費者の勘違い、得意先の勘違いも多かったように思います。

部長の対応は下記のとおりです。

1) 相手の心情を理解して丁寧にクレームを良く聴く
2) 何が問題になっているか事実関係を確認する
3) 商品の代替え案で問題の解決策を提示する
4) メーカーともどもクレームへのお詫びと感謝をする

クレームが発生したら先ずは謝罪する。相手の話をしっかり話が終わるまで聞いた後に、当社の事情説明をすることが大事です。

クレームの発生は不幸なことですが、クレームの対応に誠心誠意取り組むことで、クレーム発生以前よりも強固な信頼関係になり取引が増えることがあります。
クレームがあったら避けるのではなく、貴方を鍛えるチャンスだと思い、その問題を真正面から捉え、最善の努力をすべきだと思います。

得意先が無理難題を言っている場合は、何故、無理を言うのかを考えなければなりません。上司から「値引きを取れ」と言われている場合は、いくらこちらに理があっても0回答では話が拗れるので、落としどころを探す必要があります。
しかし、得意先の担当者が利益を出すための一方的な無理難題には毅然とした態度で臨むべきだと思います。

既に倒産した会社ですが、私は1か月の納期遅れで契約額の3倍のクレームを突き付けられ、私の対応の拙さから、得意先の社長は直接名誉会長に面会を求め、T社の名誉会長に、そのクレームを全部受けていただいた苦い経験があります。
法外なクレームを受けてしまったわけですが、社会通念を大幅に超えた対応はすべきではありません。法外なクレームは取引停止を意味します。多くの得意先は取引継続を希望するので、それほどのクレームは発生しないことが多いと思います。このクレーム後、1年ほどで倒産した社長は資金繰りに困り、納期遅れに乗じ「窮鼠猫を噛む」の心境で名誉会長に噛みついたのです。

物を作ったり売ったりする仕事とは非常にリスクの高い仕事なのです。そして財務内容の悪い会社に販売することが極めて高いリスクを負っているのだということを思い知らされました。

もう一つクレームで大事なことは社内での報告、連絡、相談(ホウレンソウ)です。特に悪い話は迅速にホウレンソウがなされなければなりません。
ナポレオンが「良い話は翌朝で良いが、悪い話は私をたたき起こせ」と言ったそうです。耳障りの悪い話は上司にしにくいものですが、上司は悪い話しこそ、一刻も早く聞きたいと思っているはずです。

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気概と執念の人

8月13日私の尊敬する元会社の先輩Tさんが亡くなられました。
楽しかった思い出があるだけに、もう会えないのだという喪失感が大きく
あの笑顔をもう二度と見られない悲しさを感じます。

良くゴルフも一緒にまわらせて頂きました。
普段は冗談や駄洒落の好きな方で、楽しいゴルフでした。
「市来君!そこ池やで!わかっとる?」
私が池に入れると、本当に嬉しそうに笑い、池に入れて悔しいはずの私も、思わず笑いを誘わせる、そんな人柄の方でした。

普段は楽しい方ですが、仕事は妥協の無い信念の人だったと思います。Tさんは生地部に所属し、私は製品部に定年までいましたので、仕事でご一緒する事は少なかったのですが、
話は良く伺いました。

その先輩Tさんが課長になりたての頃のエピソードです。

そのエピソードは私の友人で、今は良く一緒にゴルフをするYさんが登場します。

まだ20代半ばであったYは生地部で岐阜を担当していました。ミセス商品を一番良く売ると若い営業の中では注目されていました。しかし、彼が所属する課は儲かっていませんでした。ミセス素材を競争にさらされて安く売っていたからです。
儲からない課は潰されるか課長交代になります。
新しくやってきたT課長は従来のミセス素材でなく、少し若い新商品を企画し、皆に「この値で売って来てくれ」と販売させようとします。しかし、岐阜担当のYは岐阜のミセスの得意先しかありませんでしたので、「こんな商品は売れない」と文句を言います。新課長は「君だけは売らなくて良い!」と多少、感情的になります。
反抗していたYは、売らないで良いと言われて悔しかったのか、少し若い新商品を買ってくれる得意先を岐阜で必死に探します。
まもなく新商品を一番売ってくるのはYになりました。
新課長はYを褒め、実はと新商品の原価を教えます。それは従来とは比較にならないほどの高益率でした。
目から鱗のYは商売の極意を身に着けます。そして、自ら東京への販売を希望し、そのうち商品の企画に携わり、若いながら先輩に企画販売の指導をするようになります。驚くほど向上心の強いYは、いつの日か専務に、新課長は副社長になり、生地部の黄金時代を築きます。
T社の生地が独り勝ちと言われた所以は、こういった人達の「気概と執念」だったと思います。

儲からない集団を必ず儲ける集団にしてみせるという「気概と執念」のT新課長。それに触発されて、「お前は売らなくても良い」と言われ、意地でも売ってきてやるという反骨心旺盛なY青年の「気概と執念」。

私がいたT社時代の事を振り返りますと、「気概と執念」を持った人材が多くいたと思います。特に課長はほぼ全員、気概と執念を持った人材だったと思います。
持たざるを得なかったと言ったほうが正しいかもしれません。
時代が違いますので、当時の役員さんは大半が高卒の叩き上げ、大学卒もいましたが、
高卒の役員さんのほうが優秀であったように思います。
「経営は学歴でなく気概と執念」と言ったほうが良いかもしれません。
しかし、何故、T社に「気概と執念」を持った人材が多くいたのでしょう?

その理由の一つは「競争が人材を育てる」という経営者の信念だったと思います。

当時は名古屋本店と大阪支店を競争させ、意識的に同じ商品をやらせて競争させました。
大阪支店の中にも同じような課があり、課との競争をさせました。
営業は毎月、営業全員の販売目標と実績が全課に配布され
半期に一回、1番から200番まで順位を付けた販売実績表が全課に配布されます。
勿論、課の業績は毎月、全社に配布、名古屋の業績まで毎月きて刺激を受けていました。
業績が悪いと当然のように、何故悪いのかを説明し、
どうやって良くするのかを説明しなければなりません。

経営者は良い課の共通点、悪い課の共通点を上げて、課長を刺激します。
兎に角、会社に競争をあおる風土があり、いやおうなしに、
数字に対する執念を持たざるをえない雰囲気がありました。
その緊張感の中で頑張って、成長する営業もいますし、脱落する営業も出ます。
競争により社員が切磋琢磨し、「気概と執念」を持った人材が育つのも事実だと思います。

もう一つは課別独立採算制です。

この制度は課ですべてを完結するという考え方でした。
勿論、仕入れ、売上は課ごとに上げますが、経費は課の経費だけでなく、非営業の経費も各課に割り当てされます。
課が場所をどれだけ使っているかで場所代も割り当てされ、金利も割り当てされます。
課の実力が明確に業績に反映されるようにという課別独立採算制でした。
課長権限が大きくなりますが、責任も大きくなります。
課員の業績が悪いのも課長の責任ですし、経費や金利が増えるのも課長の責任です。
上手くいかないのは部長が悪いとか、課員が悪いとか言えない、自分が悪いのだという仕組みになっていました。
その制度の下で半期ごとの業績結果によりボーナスが支払われます。
業績により多い人もいれば、0(ゼロ)の人もいます。
当然、課長は売り上げを増やし、益率を上げ、経費を抑える方策を必死で実践することになります。
課長が必死になれば課員も必死になります。自ずと「気概と執念」の集団ができます。
.
私は亡き先輩Tさんから気概と執念の大事さを教えて頂きました。有り難うございました!!

「市来君!そこ天国、そっちは地獄やで!わかっとる?」

「はい、分かっていますけど、もう少しあとで…..」

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クロージング

商品を販売する商売をしている以上、いくら良い商品でも売れなくては良い商品かどうかさえ分かって貰えません。
価値ある商品でも買って貰えなければ無価値になるのです。
何故売れないのか、とことん考えることが大事です。

私の営業時代、準備不足、勘違いや思い過ごしによる失敗は数多くあります。
前年にフェイクレザージャケットが好調に売れ、得意先との根回しの結果、今年は倍増出来ると生産の準備をした結果、売約は取れたが店頭で売れずに失敗。ケミカルジーンズが爆発的に売れた次の年も同じ失敗をしました。これは今売れているものに目を奪われ、その寿命を読み違い、次に売れるものを提案できてない失敗です。得意先も前年良く売れて店頭で不足した商品を計画しますが、次に売れる商品は何かを常に考え、今売れている商品の寿命を読むことが大事です。

日頃、常に店頭を調査し、今売れているものと次に売れそうなものを見極める眼力を養っていないと精度の高い準備は出来ません。常に勉強をしていないと目の前にチャンスがきているのに気づかず、見逃してしまうわけです。得意先の優秀なバイヤーは仕入先の営業がそういう感性を持っているか、勉強しているかを興味深く見ていると思います。

商談が始まるかどうかは企画の提案であり、提案が説得力あるものにする入念な準備です。私が営業時代、得意先に当社NO,1の営業について「何故、あの営業から買うのか?」と聞いたことがあります。答えはこうでした。

「あの営業は提案が充実している、市場を良く見ているので情報も豊富で勘が良い、私が何を欲しがっているかを読むし、何に、不便を感じているか、当方に何を要望しているのかを話の中から察知し、絞り込んだ中から商談をする。何よりも商談の準備が素晴らしい。」

商品も良く、準備も出来ている、しかし、売れない。
最後の詰めが甘い為、商品が売れない事があります。
それをクロージングの失敗と言うそうです。

「成約率98%の秘訣」和田裕美著によるとクロージングとは
「買いますか?買いませんか?」と選択肢を与えて「今決めてください」とお客さんの背中を押すことですと書いてあります。この本は化粧品や保険、不動産の販売テクニックとして書かれていますので、婦人服OEM営業に置き換えて考えてみました。

売れない営業は詰めが甘い
売れない営業は詰めが甘いことが多いと思います。商談も佳境に入りお客さんが決めようと沈黙し考えをまとめようとしている時に、その沈黙に耐えられず、ウクライナがどうだとか、大谷選手は凄いとか関係ないことを喋る。お客さんは考えがまとまらなくなり、「次にしよう」となる。「今決めたら納期は守れますが、明日であれば納期は1週間遅れます。ご希望の納期が絶対なら今日決めていただけますか?」とかクロージングをタイミング良くかけることができない。

拒絶を怖がらない
営業マンが「真面目でいい人なのに売れない」「一生懸命やっているのに成績が上がらない」という場合、そのほとんどが「営業マンがクロージングをかけていない」状況だといいます。なぜクロージングをかけることが出来ないか?それは拒絶が怖いからと言っています。自信を持って決断を促す質問をするだけなのに出来ない人はできない。

お客様に不要な情報は削る
「話が上手なのに、なぜか売れない」人もいます。そんな人はおそらく「話し過ぎ」の可能性があります。自分に酔って話していても、お客様にはメリットがありません。
喋ればよいというわけではないことは良くお分かりだと思いますが、お客様に不要な情報は極力削ったほうが良いと思います。

聞き上手になる
それよりも聞き上手になることです。T社でも寡黙なタイプなのにトップセールスの人がいました。その人は聞き上手でした。相手の目をしっかり見て全身で相槌を打ち、全身全霊でお客様の話を聞いているので、お客さんも気分が乗ります。
そこで寡黙な人が一言お客さんの気に入るような言葉を言うので一気にファンになります。

お客様に好かれる
カーネギー著「人を動かす」では人に好かれるための原則を紹介しています。人に好かれるための最初の原則は「誠実な関心を寄せる」ことだと言います。そして「聞き手にまわる」「笑顔で接する」「相手の関心を見抜いて話題にする」「心からほめる」この寡黙営業は多弁ではないがちゃんとこの人から好かれる原則がすべて出来ていました。
お客様から好かれる事が、クロージングをやりやすくするのは当然のことです。
クロージングをしやすくする下準備があると思いますが、その一つがお客様から好かれることです。

商品に惚れる
その他にもクロージングをかけやすくするセールステクニックを考えてみたいと思います。その一つが勧める商品にほれ込むことです。
リサーチもし、相手の要望を読み、その結果、提案することになった商品に自分もほれ込むことが大事で、これを買えばお客さんは必ず儲かると思い込んだら、説得力に迫力がでます。

売る商品ついて商品知識を持つ
もちろん出来るかぎりの商品知識の用意も必要です。お客様が決定に迷う理由は、この商品が売れるか、この営業の言うことを信じることができるかということです。この商品の相場がどのくらいのものか、だからこの価格の提示は決して高くない、リサーチの結果、こういう理由で貴方の売り場で売れると自信たっぷりに話すことが大事です。お客さんと一緒になって売れるかどうか悩んでいては決まるものも決まりません。

無理強いをしない
自信を持って勧めることは大事ですが、無理強いはいけません。営業に無理に買わされた商品が売れなかったら、営業への信頼は落ち、次の商談に確実に影響します。人は何かを決断するとき、迷います。「買わない」という選択肢も最後まで残しておきます。不安があるお客様には、変に無理強いせず、不安をすべて聞いてください。「悩んだ結果、自分で選んだ」にすることが大事です。

アフターフォローが大事
商品を納入したら売れたり、売れなかったりしますが、売り場での消化率にも関心を持ち、あれだけ自信を持った商品が売れなかった。どこに問題があったかをお客さんと検証すべきだと思います。そしてその経験を次の商談に、商品企画に生かすのです。そのような真摯な態度はお客さんに好感を持たれます。

嘘をつかない
いくら売りたいと思っても、絶対にしてはいけないことがあります。それは嘘です。納期、品質など出来ないことは、出来ないとキッパリと断ることが信頼につながるのです。相手の厳しい価格の交渉に、安くて粗悪な素材に替える、厳しい納期に合わせる為に、使ったことのない下請けの工場に回すとかして上手く商談を進めたつもりでも、結果は必ず納期遅れや品質不良になってお客様に迷惑をかけることになり、信頼を失います。

色々書きましたが、まとめると、
「何に、不便を感じているか、当方に何を要望しているのかを察知し、真摯な態度で、自信を持って説得販売をする。」ということになるのでしょうか。

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後輩の育て方

ichiki

私がまだ現役の課長だった頃、部の朝会で私は質問されたことがあります「多忙な仕事をこなすのに何を意識していますか?」私は即座に「部下を育てる事です」と答えました。
自分の代わりに出来る人を育てる事が出来れば、今までの自分の仕事を引き継いで、やりたかった新規開拓や新企画に挑戦できるわけです。育てた部下が
又その部下を育てていくことで、組織は順調に拡大し続けることが出来るのです。自分が成長し続けるためにも後輩を優秀な後輩に育てる必要があるのです。
しかし、部下を育てると言っても容易な事ではありません。
職場でのコミュニケーションの中でも難しい仕事の一つだといえます。
どうやったら後輩を育てる事が出来るのでしょうか?

私のことで恐縮ですが、私は南九州の宮崎出身の田舎者でした。
大阪に来るまで、九州を出たことがありませんでしたので、訛りがきつく、
良く先輩から訛りのことで、からかわれていました。
T社に入社して一年間はデリバリーをやり二年目から営業につきました。
デリバリー時代に私はこの仕事は向いていないと感じ、機会があれば田舎に帰りたいと思っていました。

営業一年目は寝具課に入りましたが、どうしても商品を好きになれない。希望を出して、田舎に帰るチャンスがあるかもしれないと九州地方の販売員になりました。重いキャリーバッグを両手に抱え、九州各地を転々として売りに歩く仕事も好きになれませんでした。もう一度、希望を出して婦人服ボトムの課に入れてもらいました。この頃には、もう自分自身で営業失格だと自覚するに至っていました。

鳴かず飛ばずで、一年が経過し、毎日辞める事を考えていた時、新入社員が入り、初めて私にU君という部下が付きました。しかし、優秀な新入社員との噂の社員です。いつも目がギラギラして、いかにも気の強そうな後輩です。私はU君の教育係を命じられて躊躇しました。歓迎会の宴席で仕事に関しての矢継ぎ早の意欲的な質問に閉口しましたが、突っ込んで話してみると、熱い心を持った好青年で、好きになりました。

私はこの後輩の模範となるべく努力するようになったのです。「ダメ営業では教えることは出来ない」この後輩に馬鹿にされないようにノルマもこなし、仕事の本も読み、勉強するようになりました。先輩に指導されても反応出来ない私が、この熱いU君と切磋琢磨するようになったのです。毎週末には飲みに行き、仕事の話だけでなく、家族のことや、恋愛、人生論にまで話は及びました。彼は遅くなると私の家に泊まり込んでまで熱く語りました。
このころから課長からの評価も高くなり、「お前の企画力はたいしたものだ」とまで言ってもらえるようになったのです。

U君が入社するまでは、私は仕事に対して受け身だったと思います。与えられた仕事をイヤイヤこなす毎日が面白いはずがありません。U君との出会いが仕事への向き合い方を変えてくれたのです。
「教えることは学ぶこと」だったのです。私は教育係を命じられましたが私がU君を教えることで多くのことを学びました。今から思うと私はU君と同じ目線で物を考え、行動していたと思います。私も彼を信頼し、彼も私を信頼していたように思います。
その後、私はボトムの課長になり、彼はブラウスの課の課長になって業績を競う仲になりました。

いくら先輩が後輩を指導しようと思っても、その後輩が先輩の話は聞きたくないと思っていたら、面従腹背になり、なかなか指導にはなりにくいという事になります。しかし、もちろん、後輩が聞きたくない顔をしているからといって何も言わないでおくと、後輩の指導にはなりません。
後輩が先輩の話を聞きたくないと思うのは先輩を尊敬出来てないからだと思います。

1)手本を見せる

部下は上司のことを良く見ています。口では立派なことを言っても、行動が伴っていなければ部下は聴く耳を持ちません。
先ずは先輩がやって見せ、手本を見せることです。
山本五十六の言葉「やってみせ。言って聞かせて、させてみせ、誉めてやらねば人は動かじ」はあまりにも有名ですが、この言葉が核心をついているからだと思います。
後輩を育てるためには自分がしっかり見本を見せることが前提です。
その行動、言動に納得いってこそ、後輩は聴く耳を持ちます。
結局、部下を育てるという行動は自分を成長させることに繋がります。

2)権限移譲する

車の運転、自転車もそうですが、理論的に分かっていても、実践してみなければ運転できるわけがありません。実際に運転してもらう事が技術習得の早道です。
やらせてみてこそ、後輩は仕事の難しさとか楽しさが実感でいるのだと思います。「やらせるのにはまだ早い」とか思っていると、いつまで経っても任せることが出来ません。かといって、何でもかんでも仕事の丸投げは後輩を潰すことになります。後輩の失敗の責任は全部自分が取る気持ちで仕事を渡すことが大事です。そうすれば後輩は思い切って仕事に挑戦することが出来ます。

3)適切な指示、注意をし、成果は素直に褒める

後輩が仕事に挑戦すると、必ず失敗もします。その時は何故失敗したかを
一緒に考えて適切な指示、注意をします。決して頭ごしに怒ったりしないことです。怒られる恐怖から二度と挑戦する意欲を削がれたら困ります。
反対に後輩が成果を出した時は一緒に喜んで100%褒めます。
私がまだ若くて仕事に自信を持っていなかった時「お前の企画力は大したもんだ」と褒められて嬉しくなり
それがきっかけで仕事に一生懸命になれた事を思い出します。

4)コミュニケーションを良くする

後輩には任せた仕事の報告をさせます。その報告について質疑応答しながら
アドバイスをし、先輩からも報告、相談をすることによってコミュニケーションが良くなります。攻撃的な先輩の下で育った後輩は、怒られるのが怖くて失敗を隠す、報告を捏造することに繋がります。受け身的な先輩の下で育った
後輩は先輩の反応が少ないのでやる気を失い、先輩をなめてかかります。
報告、連絡、相談が習慣化され、コミュニケーションが良くなればなるほど
後輩が育ちやすい環境が出来ていきます。

山本五十六の言葉に続きがあります。

「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

5)信頼を寄せる

感謝され、信頼されれば後輩は責任感が強くなり、俄然、やる気が出るはずです。
私もT社の社長から説教され、厳しい指導を受けた時、「いずれ、お前が製品部のリーダーになると見込んでいるから言っている」と言われ、厳しい指導を素直に受け入れた事を思い出します。

6)後輩に考えさせる

後輩を育てる為に何でも答えを直ぐに言うと、後輩は自ら考えることをせず
何でも先輩に聞いてきます。ヒントを与えて自ら考える力を付けさせる事が大事です。「何故、企画提案の営業が必要なのか?」「得意先の商品のテイストは?
主力商品は何か?」自ら考える営業を育てなければいけません。

7)後輩の事を良く知る

人は自分のことに興味を持っている人に好意を持つものです。
後輩の仕事以外のことの趣味や家族のことも良く知ることがコミュニケーションを良くすることに繋がります。

8)教育は根気仕事

知識として知ることは比較的簡単であるが、本当に身について実行できるためには長年の訓練が必要です。T社では「教育1年、修練10年」と言われておりました。育てるには粘り強い根気が必要と覚悟すべきです。

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自己改革、自己啓発

インフォアイの皆さんが日々自己成長し、良い仕事をしたいと思われているのを面談していると感じます。成長のためには「自己改革、自己啓発」が必要だと思うのです。今日は「自己改革、自己啓発」について考えてみます。

私達の得意先であるファッション業界は変化対応業だと思います。
変化する服のトレンドにどう対応するか、変化する業界に的確に対応できるかが勝負です。過去の成功体験に執着していては変化に対応できなくなります。常に進化していく必要があるのです。

私も問屋の衰退、専門量販店の衰退、百貨店の衰退といくつもの会社が倒産するのを見てきました。ブランドもそうです。商品もブランドも会社も常に成長と衰退を繰り返しながら変化していきます。変化する環境の中で私達こそが変化しなければなりません。成長も衰退も人のなせる技だからです。
そこで常に私達は自己改革、自己啓発を続ける必要があるのです。

自分の不得手を克服し、大経営者になった人もいますし、自分の長所を生かし成功した人もいるでしょうが、いづれにしても自分の長所、短所を見つめ、自己改革、自己啓発をしていく必要があると思います。

●自説を曲げず、失敗した例

私が課長になり、何年か経過した頃、優秀なカットソーの課長が誕生しました。
彼は頭もよく、営業力もあり、自信家でした。
弁舌も爽やかで、会長からの評価も非常に高く、会長は私のライバルとして育てようとの意図がみられました。
私の次長昇進と同時に彼も次長に昇進し、私も彼の能力を高く評価していました。
為替は円高の流れが続いていました。当時、為替は課長に任せれ、仕入れた分だけドルを買うことを指導されていました。
彼は早期に企画し、早期に発注するという大量生産大量販売を戦略とし、円高は追い風となり、好成績を残していました。
早期大量発注で原価が相当安いうえに$=110円の頃に発注し、商品が上がってきた時の$=100円でつなげば余分に利益が出ます。
ところが、1996年に一転として円安の局面になり、一年以上円安が続くのです。
$=¥100で発注していたものが$を繋ぐときは$=¥110~¥120、早期発注、大量生産の企画のずれもあり、利益が全く出ないようになりました。

それでも、プライドが高く自説を曲げようとしない彼は行き詰まり、不正に手を出すことになります。
結果、不正は発覚し、退社を余儀なくされたのです。

過去の成功体験は自信になりますが、その自信過剰が命取りになります。私もデニムで大成功を収めた翌年に大失敗をした経験があります。
自信喪失の私は唯我独尊であった自分を反省し、部下に任せるところは任せ、部下や上司、得意先の意見を積極的に聞くように
やり方を変え、立ち直ることが出来ました。自信は大事ですが、自信過剰で自説を曲げ無いのは命取りになります。

●尊敬できる人を目標にする

私は30代半ばの頃、婦人のパンツ業界で名を轟かしていたタキヒョウ―の伊藤課長に憧れました。メーカーでも得意先でもすこぶる評判が良く、社員からも尊敬されている人でした。音響機器のKENWOODからの転職で成功された方でした。凄腕の割には物腰が柔らかく、上智大学で落語研究会に所属していたというユーモアのセンスもある人でした。剛腕からは想像できないソフトなイメージのギャップに私はますますファンになり。私はそのパンツ業界で競争し、追いついてやろうと決心するのです。
私の仕事への情熱は伊藤課長と出会い、その影響を受けたことで始まったといって過言ではないと思います。影響を受ける人が社長だったり、先輩だったり、他業種の人、偉人、大経営者、スポーツ選手と人それぞれに違いはあると思いますが、自分の憧れる人を目標にして、自己啓発していくことは自己改革の努力を継続していくに有効な手段だと思います。

人それぞれに、仕事に対してこういう人になりたいというテーマがあるのではないかと思います。企画提案の優れた人になりたいとか、仕事のスピードを身につけたい人になりたい、コミュニケーションの達人になりたいとか、そう思ったらその道に優れた人を目標としたり、本を読んだりして研究することです。
今はネットを検索すればいくらでも参考になる本や話は見つけることが出来ると思います。

●社員に三つのタイプ

日本電産の永守社長は「社員には三つのタイプがいる。第一は自ら仕事に燃えられる自燃力のあるタイプ。第二は他人が仕事に燃えるのを見て、刺激を受けて自分も燃えるタイプ、第三が全く燃えない、或いは燃えようとしないタイプだ。」と言っています。
自燃力のあるタイプはごく僅かで、大多数は第二のタイプです。

野球の天才だと言われる大谷翔平選手が所属するエンゼルスのアダム.チェツコ広報部長が言っています。

「大谷翔平選手の用意周到に驚かされる。試合後にクラブハウスではノートを取っています。クラブハウスでノートを取っていない時はウエートルームでトレーニングしています。常に本番に向けて準備をしているのです。」

そして、大谷翔平が言っています。「人生は短く、時間が足りない、遊んでいる暇は無い」

間違いなくは自分で課題を見つけ、自分で克服していく人、
代表的な自燃力のあるタイプです。

しかし、多くの人は第二の他からの刺激を受けて燃えるタイプですから、人から、本から、ネットからと常に刺激を求めていく必要があるのではないでしょうか。

●変えるべきもの、変える必要のないもの

しかし、世の中には悪い刺激も多くあります。「朱に交われば赤くなる」という諺があるように人は関わる人によって
良くも悪くもなります。悪い刺激が魅力的に見える時もありますので、悪い人や悪い情報をなるべく避けることも大事です。
「変えるべきもの、変える必要がないもの」を自分で取捨選択し、自己の成長に繋げていきたいものです。例えば、野球の基礎練習であるキャッチボール。肩慣らし程度に行う

●思いを「潜在意識」に浸透させる

多くの人は自己改革を望んでいるでしょうが、改革に成功する人と成功しない人が出てきます。
私はその差は思いの強さだと思います。
京セラの稲盛名誉会長が「働き方」の本の中でこう言っています。

「思いは必ず実現する。
それは、人が「どうしてもこうありたい」と強く願えば、その思いが必ずその人の行動となって現れ、実現する方向におのずから向うからです。
ただそれは、強い思いでなければなりません。
漠然と思うのではなく「何がなんでもこうありたい」「必ずこうでなくてはならない」といった、強い思いに裏打ちされた願望、夢でなくてはならないのです。
寝食を忘れるほどに思い続け、一日中、そのことばかりをひたすら繰り返し考え続けていくと、その思いは次第に「潜在意識」にまで浸透していきます。
「潜在意識」とは自覚されないまま、その人の奥深く潜んでいるような意識のことです。普段は表に出てきませんが、思いもかけないとき、またいざというときに現れて、計り知れない力を発揮します。」