実践ガイド 全6回・第3回 / インドで日本ブランドを売る
JIIPAをどう使うか——パートナー探し・情報収集・専門家への橋渡し
— インド進出の成否は「誰と組むか」で決まる。日印国際産業振興協会(JIIPA)を、パートナー探し・生の情報・専門家への橋渡しの入口として使う方法 —
日印国際産業振興協会(JIIPA)の公表資料・各回イベントの告知(インドトレンドフェア東京、India Fashion & Lifestyle Show 大阪、インドテキスタイル産業セミナー等)・インド輸出組織連盟(FIEO)の公表資料・日本貿易振興機構(ジェトロ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)、Invest India 各機関の公表資料ほかをもとに編集。筆者(株式会社インフォアイ代表)はJIIPAの理事を務めており、本稿はその立場からの紹介を含む。JIIPAの最新の事業内容・会員制度・イベント日程は、同協会の公式サイトで確認されたい。
第1回では参入ルートを、第2回では商標を整理しました。どちらにも共通するのは、インド側に信頼できる相手がいるかどうかで、選べる手が大きく変わるということです。ディストリビューター、フランチャイジー、合弁相手、物件を紹介してくれる人、商標代理人、会計士——インドでのビジネスは、人のつながりで進みます。
第3回は、そのつながりを作る入口として、筆者が理事を務める日印国際産業振興協会(JIIPA:Japan India Industry Promotion Association)の活用方法を、他の支援機関との使い分けとあわせて紹介します。
一言でまとめると:JIIPAは、日本とインドの経済交流を促進する東京拠点のNPO法人で、在日インド大使館・インド政府機関・インド輸出組織連盟(FIEO)などの業界団体と連携し、インドトレンドフェア東京やIndia Fashion & Lifestyle Show(大阪)などの展示会、インド政府要人を招いたセミナーを開催してきた。繊維・ファッション・ライフスタイル分野に強い。日本ブランドにとっての使いどころは、①インド側パートナー(製造・流通・小売)との出会い、②現場の生の情報、③インドの専門家・業界団体への橋渡し、④単一ブランド小売の30%現地調達を見据えたインドの調達先探し、⑤現地視察・商談の段取り。一方、JIIPAは商標出願や法務・税務の代行機関ではないため、手続そのものは専門家に、制度情報や補助金はジェトロ等にと使い分けるのがよい。
✏️ 編集後記
筆者はJIIPAの理事を務めているため、本稿は中立的な第三者の評価ではなく、協会の活動に関わる立場からの紹介を含む。そのことを前提に、JIIPAに「できること」と同じ比重で「できないこと」と他機関との使い分けを記載した。JIIPAの活動内容は同協会および共催団体の公表資料・イベント告知に基づき、インドトレンドフェア東京の回次は当社の出展報告(2026年8月)による。
この記事の内容
① 先に答え——「誰と組むか」の入口として使う
② JIIPAとは何か
③ 日本ブランドがJIIPAを使う5つの場面
④ 「売る」と「作る」を同時に考える——30%現地調達との関係
⑤ 他の支援機関との使い分け
⑥ 相談前に用意しておくもの
⑦ 注意点——JIIPAに「できないこと」
① 先に答え——「誰と組むか」の入口として使う
— インドでは、紹介があるかないかで相手の対応が変わる —
インドのビジネスでは、信頼できる人からの紹介が非常に重視されます。見知らぬ外国企業からの突然のメールには返事がなくても、知人や業界団体を通じた紹介であれば、経営者本人が会ってくれることは珍しくありません。
JIIPAは、日本とインドの企業・団体・政府機関が顔を合わせる場を継続して作ってきました。日本ブランドがインドに出ていくとき、最初の「紹介」を得る入口として使うのが最も効果的な使い方です。
② JIIPAとは何か
— 日印の経済交流を進めるNPO法人 —
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 特定非営利活動法人 日印国際産業振興協会(Japan India Industry Promotion Association:JIIPA) |
| 拠点 | 東京 |
| 目的 | 日本とインドの経済交流・産業振興の促進。日印両国の産業・市場に関する情報の収集と提供 |
| 連携先 | 在日インド大使館・総領事館、インド政府機関(繊維省など)、インド輸出組織連盟(FIEO)をはじめとする業界団体・輸出促進協議会、商工会議所など |
| 主な活動例 | インドトレンドフェア東京(インドの繊維・アパレル・ホームテキスタイル・雑貨などの企業が出展する展示会。2026年で第18回)、India Fashion & Lifestyle Show(大阪、FIEOとの共催)、インド政府繊維省の要人を迎えたセミナー(2026年6月、大阪)、ビジネスマッチング、情報提供 |
| 得意分野 | 繊維・アパレル・ファッション雑貨・ホームテキスタイル・ライフスタイル |
インフォアイは、JIIPAの一員として、インドトレンドフェア東京でインド企業の出展をサポートし、展示会・商談支援クラウド「SelfPicks」による多言語(日本語・英語・ヒンディー語ほか)の商談環境も提供しています。
③ 日本ブランドがJIIPAを使う5つの場面
| # | 場面 | 具体的な使い方 | このシリーズとの関係 |
|---|---|---|---|
| 1 | インド側パートナーとの出会い | 展示会・交流会で、インドの製造業者・輸出業者・流通業者・小売関係者の経営層と直接会う。インドの企業グループには製造と国内流通・小売の両方を手がけるところも多い | 参入ルートA〜D(第1回) |
| 2 | 生の情報 | 統計や報告書には出てこない、売場の実感・価格感・業界の評判・相手企業の実態を聞く | 価格設計(第4回)、出店(第5回) |
| 3 | 専門家・団体への橋渡し | インドの業界団体や、現地の実務家(会計士・弁護士・商標代理人・物流業者など)につながるきっかけを得る | 商標(第2回)、法人設立(第5回) |
| 4 | インドでの調達先探し | インド製の衣料・雑貨の生産パートナーを探す。単一ブランド小売の30%現地調達条件の準備にもなる | 外資規制(第5回) |
| 5 | 現地視察・商談の段取り | インドの展示会(Bharat Tex など)や工場・売場の視察を、目的に合わせて組み立てる相談 | 全体 |
④ 「売る」と「作る」を同時に考える——30%現地調達との関係
— インドの調達先は、出店の条件にもなる —
第5回で詳しく扱いますが、外資が51%を超える単一ブランド小売の会社は、仕入額の30%をインドから調達することが条件になっています(最初の5年間は平均で判定。2019年の緩和で、インドから調達してグローバル事業に使った分も算入できるようになりました)。
つまり、インドで直営店を出したい日本ブランドにとって、インドの生産パートナーを持つことは「コスト削減」以上の意味があります。インドで作った商品を日本や第三国でも販売すれば、その調達額は現地調達の実績になります。
JIIPAの展示会に出展するインド企業の多くは、日本市場向けの品質・納期・ロットに対応しようとしている製造業者です。「インドで売る」準備として、まず「インドで作る」関係から始める——これは筆者自身が歩んできた道でもあります。前職の繊維商社でインドの生産管理に携わり、2002年の起業後も、創業当初は売上をつくるためにOEM受注でインド生産を手がけてきました。前職を含めて34年、インドではまず「作る」ことから関係を築いてきました。
⑤ 他の支援機関との使い分け
— それぞれの得意分野を組み合わせる —
| 機関 | 得意なこと | こんなときに |
|---|---|---|
| JIIPA | 日印の人的ネットワーク、繊維・ファッション・ライフスタイル分野の展示会・商談の場、インド業界団体との接点 | パートナー候補に会いたい、業界の生の声を聞きたい、インドの調達先を探したい |
| ジェトロ | 国別の制度・統計情報、知的財産の相談、海外展開・商標関連の補助事業、海外事務所(ニューデリー、ムンバイ、ベンガルール、チェンナイ、アーメダバード) | 制度を正確に知りたい、商標の係争費用の助成を受けたい |
| 中小機構 | 中小企業の海外展開に関する専門家相談・ハンズオン支援 | 海外展開の計画づくりから伴走してほしい |
| 在日インド大使館・Invest India | インドへの投資の公式窓口、投資手続・州政府との接点 | 法人設立・大型投資の前に公式情報を得たい |
| 商工会議所 | 日印包括的経済連携協定(CEPA)の特定原産地証明書の発給 | 日本製品の輸出で関税の優遇を受けたい |
| インフォアイ | インド・ジャイプールの自社拠点、多言語(英語・ヒンディー語)サイト構築、展示会・商談支援(SelfPicks)、商品情報・画像管理(KIRIKOM PLUS) | インド向けの販促・商談・商品情報の実務を進めたい |
⑥ 相談前に用意しておくもの
— 具体的であるほど、紹介の質が上がる —
相談前の準備リスト
☐ インドで売りたい商品の一覧(写真・素材・日本での価格帯・HSコードの見当)
☐ ブランドの説明資料(英語)——歴史、こだわり、日本での販売実績、ターゲット顧客
☐ インドでの想定ルート(ディストリビューター/EC/フランチャイズ/合弁/直営)と優先順位
☐ 求める相手の条件(地域、規模、扱っている商品、販路)
☐ 商標の状況(日本・インドでの出願・登録の有無)
☐ 社内の体制と予算感、意思決定者
⑦ 注意点——JIIPAに「できないこと」
— 役割を正しく理解して使う —
- JIIPAは商標出願・法務・税務の代行機関ではありません。出願や契約書作成、税務申告は、インドの商標代理人・弁護士・勅許会計士(CA)に依頼してください
- 紹介はきっかけであり、相手の信用を保証するものではありません。取引前の与信確認・契約条件の詰めは、自社の責任で行う必要があります
- 事業内容・イベント日程は年度によって変わります。最新の情報は同協会の公式サイトや事務局で確認してください
次回は、インドでの税制度と価格設計。関税・GST・MRP表示・法人税・ロイヤルティ課税まで、「売値」がどう決まるかを試算とともに整理します。
Series — 全6回
「インドで日本ブランドを売る」実践ガイド 全6回
第1回:日本ブランドにインドで勝機はあるか——市場・障壁・参入ルート
第2回:商標を先に取られたらどうするか——抜け駆け出願への対処
第3回(本稿):JIIPAをどう使うか——パートナー探しから専門家への橋渡しまで
主要引用・参照元一覧
- 特定非営利活動法人 日印国際産業振興協会(JIIPA)公表資料・各イベント告知(インドトレンドフェア東京、India Fashion & Lifestyle Show)
- インド輸出組織連盟(Federation of Indian Export Organisations:FIEO)公表資料
- インドテキスタイル産業「ビジネス動向と発展」セミナー(2026年6月17日、大阪)告知資料
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)海外事務所・知的財産関連支援の案内
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)海外展開支援の案内
- Invest India(インド政府の投資促進機関)公表資料
- インド商工省 産業国内取引促進局(DPIIT)Consolidated FDI Policy——単一ブランド小売の現地調達条件
- 株式会社インフォアイ「第18回インドトレンドフェア東京2026へインド企業として出展」(2026年8月2日)
- 本シリーズ第1回・第2回
※本稿は公開情報の要約・整理を目的とした実務ガイドであり、法務・税務・知的財産・労務・投資の助言を意図するものではありません。法令・規則・税率・補助制度は執筆時点(2026年10月)で確認できた各機関の公表資料および専門家の公表解説に基づきます。制度は頻繁に改定されますので、実際の出願・投資・出店・雇用にあたっては最新の一次情報をご確認のうえ、インドの弁護士・勅許会計士(CA)・商標代理人、JETRO・JIIPA等の支援機関にご相談ください。
インフォアイは2002年の創業から25年、インド・ジャイプールに自社拠点を置き、日印国際産業振興協会(JIIPA)の理事として日印のビジネス交流に関わってきました。市場調査、パートナー探し、多言語(英語・ヒンディー語)サイト構築、展示会・商談支援まで、インド進出の実務をご相談いただけます。
繊維商社にてインド生産を中心とした業務に12年間従事。現地工場との生産管理や品質管理、繊維ビジネスの実務経験を積む。その後、2002年にインドと日本を拠点とする株式会社インフォアイを設立(2026年で25年目)。創業当初は売上をつくるためにアパレルのOEM受注を手がけ、インドでの生産を続けてきた。前職を含めたインドでの繊維生産・生産管理の経験は34年。繊維業界向けのクラウドソリューション開発や画像加工サービス「キリコム」を中心に事業を展開。現在は繊維業向けクラウド「KIRIKOM PLUS」など、繊維業界の業務効率化とデジタル化を目的としたソリューションを日本・海外の企業に提供している。
インド事務所スタッフのインタビュー動画:YouTubeで見る ▶